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平成27年度エネルギー白書(概要版)を読む

 前回記事「原子力ムラの孤立?」では、エネルギー政策のメジャーストリームから「原子力ムラ」がはじきだされたのではないかという分析を行ったが、一昨日(2016年5月17日)に公表された「平成27年度エネルギーに関する年次報告書(エネルギー白書)」[経産省ホーム-エージへのリンクです]でも、この傾向は明白である。まだ概要版しか見ていないが、原子力について、あるいは石炭の位置づけについて、かなりはっきりした傾向を見て取ることができる。
 本来であれば本文の分析を行うべきところであるが、なかなか時間が取れそうにないので、まずは概要版分析から。

 概要版では、エネルギー白書第1部「エネルギーを巡る状況と主な対策」(第1~第3章で構成)に対応する大見出しが立てられ、それぞれに複数のスライドが割り付けられている。ただし、白書本文第3章見出しには「パリ協定」の名称が明記されているのに対して、概要版では異なる表現となっている(本文中にはパリ協定を明記)。
 以下、概要版の大見出し(■印)とスライド見出し(-印)を列挙する。また、同じ見出しで複数のスライドがある場合は、サブタイトルに~印を付記した。

■ 原油安局面における将来を見据えたエネルギー安全保障のあり方
 - 過去の原油価格下落局面と足下の状況
 - 今後の原油価格見通し
 - ①将来の安定供給に向けた上流開発投資の促進
  ~ 原油安局面において急速にしぼむ上流開発投資
  ~ 公的なリスクマネー供給と中核企業の創出
 - ②原油価格変動リスクへの対応
  ~ 震災後、LNG輸入が急増し貿易収支は悪化
  ~ LNG市場を巡る課題
  ~ 緊急時対応枠組みの構築・拡充
 - ③エネルギー効率の向上、エネルギー源の多様化
  ~ 我が国の質の高いインフラで貢献
  ~ 新興国・産油国への省エネ制度の輸出
  ~ 制度輸出と一体となった省エネルギー技術の展開

■ 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故への対応とその教訓を踏まえた原子力政策のあり方
 - 東京電力福島第一原子力発電所事故への対応
 - 原子力災害からの福島復興の加速に向けた取組
 - 福島を未来の新エネ社会を先取りするモデル創出拠点へ
 - 原子力政策に対する社会的信頼を高めていくための取組

■ 気候変動問題への危機感の高まりとエネルギー政策の変革の必要性
  ※報告書本文では「第3章 パリ協定を踏まえたエネルギー政策の変革」
 - エネルギーミックス実現による世界最高水準の排出量原単位への挑戦
 - 環境制約と成長の両立を実現する「エネルギー革新戦略」
 - CO2削減に向けた電力分野の新たな仕組み
 - バランスの取れた再生可能エネルギーの導入拡大を進める

 以上が概要版のスライド見出しである。

 次に「原子力」「石炭」「再エネ」の3つの用語を検索(Acrobat Reader DC による文字列検索)して前後の文脈を追ったところ、以下のような特徴があった。

● 原子力
 「福島第一原子力発電所事故」「原子力災害からの福島復興」「原子力政策に対する社会的信頼」(いずれもスライド見出し)といった文脈で使われており、「拡大」「推進」のような表現は見られなかった。

● 石炭
 「高効率石炭火力発電所の例」として、磯子火力の写真が掲載されているのみで、文章での記述は見いだせなかった。

● 再エネ(再生可能エネルギー)
 以下のような記述が見られた。
 - 「再エネの導入拡大」(スライド:福島を、、モデル創出拠点に)
 - 「再エネの拡大」(スライド:、、エネルギー革新戦略)
 - 「再エネについては、CO2の排出が少ない電源の価値が適切に評価され、その価値が市場で取引されるような環境整備を行っていく」(スライド:、、電力分野の新たな仕組み)
 - 「再エネの導入量は増加したが、太陽光発電に偏った」(スライド:バランスの取れた再生可能エネ、、)
 なお、ここでは分析しなかったが省エネ関連の記述もかなり充実していると感じた。

 個別に批判すべき点、提言すべき点は多々あると思うが、原子力・石炭・再エネ3者の扱いの相違に、政策的力点の置き方や国際的文脈への配慮が伺えるように思う。

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