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FITの認定出力・運用開始出力の見方(太陽光発電への批判に関連して)

 FIT(固定価格買取制度)の運用面で、とくに太陽光発電で「枠取り」が多いのではないかという批判が出ている。
 表1は経産省が公表している2014年3月末時点での、FIT認定量と導入量(運転開始した出力合計)を示したものだ。この中の太陽光発電(非住宅用)について、FIT導入後2年度の導入量合計が約644万kW(70.4+573.5)なのに対して、認定容量はその約10倍の約6304万kWにのぼっており、その相当部分が「枠取り」ではないかという疑念が持たれているのである。

表1 再生可能エネルギー発電設備の導入状況
1

[出典1]
経済産業省「なっとく!再生可能エネルギー」の固定買取価格ページ
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/index.html#setsubi
から、2014年3月末のpdf表を抜粋したもの。このページでは集計が整い次第月々のデータが更新されている。

 最初に、なぜ「枠取り」が行われるかを簡単に説明する。
 FIT制度は、普及・量産により建設費が下がっていくことを期待しており、とくに太陽光発電の場合顕著に低下することがドイツ等の事例で明らかになっている。したがって、まずは認定を受け、その後設備価格が下がってから建設すれば利益が大きくなるし、自分でやる気がなければ権利を他人に転売することも期待できるからである。
 政府もこの問題に気づき、地主およびメーカーとの契約書の提出を義務づけたので[出典2・3]今後そのようなことは起きないと思うが、現在の数字にはそういう「枠取り」が含まれていると考えられる(ただし、問題が明らかになったものは順次認定を取り消されている)。

[出典2]
すでに認定を取得した案件についての調査結果は
http://www.meti.go.jp/press/2013/02/20140214005/20140214005.html
[出典3]
H26年度からの運用変更については
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/20140422_nintei.pdf
(pdfファイルにリンク)


 さて、「問題があるかないか」という意味において「問題がある」ことは、政府の対応から見てもはっきりしている。では、その問題はどの程度大きな問題なのだろうか。
 表1を見ると、運転開始した出力合計は認定されたものの10分の1に過ぎず、約90%が運転開始していないように見える。しかしその一方、出典1によれば、認定取り消しに向けた聴聞対象は件数ベースで14%、出力ベースで23%となっている。この差はどこから来るのだろうか?

 この議論のためには時系列に目を向けることが必要なのである。経産省は時間断面(ある日限における認定数量と運転開始数量)を公表しているが、この数字だけ見ていても適切な議論は行えない。
 図1は、10kW未満の太陽光発電(大部分が屋根置きであろう)について、認定出力と運転開始出力を図示したものである。

 図1 10kW未満の太陽光発電で認定出力と運転開始出力の推移
1_2

[出典4]
 出典1と同じページの過去データから作図

 上で「時系列に目を向ける」と書いた意味は、図1から明らかだろう。同日時点での認定出力と運開出力に直接の関係はないのだ。認定を受けた時点から建設に着手し、一定の時間経過後に運転を開始するわけだから、その時間差にこそ意味があるのである。そして図1に示された「2か月」という時間差は、屋根置き太陽光における工事期間としては合理的だと私は考える。

 さて、同様に10kW~1MWと、1MW以上について同様の分析をしたのが図2・図3である。
 数百kWクラスで13か月、メガワット以上で15か月というのは、時間をかけすぎているように思う。認定を受けた後実際に建設するまでの時間を遅らせて、設備費が低下するのを待っていたのではないかという疑いは残る。
 とはいえ、今後は上記のとおりそのようなことができなくなる(メーカーとの契約後に設備認定)ので、制度制定初期に混乱があったものとして、これからの動向を注視していきたい。

図2 10kW~1MWの太陽光発電で認定出力と運転開始出力の推移
2

[出典5]
 出典1と同じページの過去データから作図

図3 1MW以上の太陽光発電で認定出力と運転開始出力の推移
3

[出典6]
 出典1と同じページの過去データから作図

 なお、太陽光以外の再エネに関しては開発に数年以上のリードタイムがかかるので、平均でどの程度の時間差が生じるかを見極めるデータが揃うまでに、なお1年以上の時間が必要だと予想している。

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