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先の衆院選の争点

 「リベラル」の敗北理由について、私なりに考えたことを。
 まだまだ検討途中の内容であり、すでに発表された、あるいはこれから発表される多くの方の論説も読みながら熟考する必要があると思っています。あくまでも現時点での中間まとめとして描きました。

■ 最初にお断り

 最初に書いておくが、私は「リベラル」という概念が日本の政治を分析する概念として妥当かどうか、疑問を持っている。「右翼vs左翼」という概念整理はヨーロッパ発の(しかもやや古い?)ものであり、「保守vsリベラル」という概念整理はアメリカ発のものであって、それぞれの地域の政治状況を説明する概念として生まれたものだ。それをそのまま日本の政治状況の概念整理に使えるだろうか?という疑問である。
 むしろ「3種類の保守がある」と整理した方が日本の状況はうまく説明できるのではないかという仮説を持っていて、この考えについては未成熟ながら覚書的な記事を先に書いたところである(『日本には3種類の保守が』)
 しかしながら、おそらく多くの人にとっては「リベラル」の敗北と書いた方がわかりやすいと思うので、本稿では括弧付きでこの表現を採用する。

■ 「世論」をどのように把握するか
 国民の投票行動に反映される「世論」、漠然としていてなかなかつかみ所がないのだが、興味深い世論調査結果(下記URLにある日経の記事)を見たのでこれを参考にモデル化を試みる。

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG08030_Y2A201C1CC1000/?buffer_share=d6bb5&nbm=DGXNASDG0802O_Y2A201C1MM8000

 この記事は会員登録をしないとおそらく読めないので、内容を簡単に引用しておく。日経が原発政策について聞いたところ、「即座に脱原発」が21%、「脱原発を目指すべきだが当面は必要」が61%、「今後も必要」が13%だったということだ。
 さて、これをモデル化してみよう。今後も必要が13%というのはちょっと少ないように感じるので、きりがいいように「再稼働せず脱原発」が20%、「再稼働するがいずれは脱原発」が60%、「再稼働し原発継続」が20%だとしよう。
 次に、もう一つ政策の軸を立ててみよう。今回の選挙の重要テーマとして、ここでは憲法を取り上げてみる。安倍晋三氏が、ここはチャンスと見て念願の憲法改正を全面に立ててきた。
 憲法についても、原発と同じように「憲法改正で国力強化」が20%、「改正は必要だが内容や時期に疑問」が60%、「憲法擁護」が20%だと仮定しよう。
 この2つの軸についての意見は実際には相関関係があるだろうが、ここでは独立した論点ということにして、次のような図を描いてみた。

121225_01

※ 自民党が憲法改正に込めようとしている内容をとりあえず「国力」と表現したが、ここのところは別途充分考える必要があり、稿を改めたい。

 さて、図では、自民党と「リベラル」の、今回の選挙における主張の幅を、矢印を使って示したつもりだ(私の感覚的判断だが)。そして、中央の広い部分をどちらが多く占めるかが選挙結果を左右するというイメージを表している。
 この図解が的を射ていれば、「リベラル」(図中ではスペースの都合で「」を外した)が勝つために取るべきだった選挙戦略が見えてくる。原発について主張の幅を拡げるか、憲法改正について切り込んでいくか、ということだ。ただし、幅を拡げると主張は弱くなる。(実際的なことを言うと、原発を強い論点にせず「今は憲法改正じゃないだろう」で攻めるのが正解ではなかったか?)

 「強い主張は狭い」「主張の幅を拡げると主張は弱まる」というのは政治的対立軸について広く言えることではないだろうか。そしておそらく自民党はそれを熟知したうえで、今回は憲法改正に勝負を賭けてきた面があるように思う。それを受けて立つ側に対抗戦略があっただろうか。

 もちろんこの図は、わかりやすいように原発と憲法という2つを軸に描いたものであって、実際の政策的論点は他に重要なものがいくつかあっただろう。たとえば経済や、外交などが考えられる。また、有権者の反応にもいろいろな要因が関係するわけで、このような単純なモデルで議論できる要因は限定的だ。
 とはいえ、今回の選挙で「強くて狭い主張をするテーマ」「弱いが広い主張をするテーマ」をどう選択するかという整理は、選挙戦略立案にあたって必要なことだと思うのである。

■ 政権を取る意志のない野党のなれ合い政治

 政治評論家の田中良紹氏はかつての社会党について、政権を取る意志がなく自民党となれ合って、狭い主張で少数の支持者に満足していた、という主旨の批判をする。なるほどまったくだとおもう。
 そしていまだに、自民党に対抗しようとする人たちはこの発想から抜け出せていないのではないかと感じることがある。つまり、状況を見て主張の幅を拡げる(その分主張が弱まる)ことを潔しとしない発想があるように感じるのだ。
 以前であれば「主張が曖昧なら自民党の方が安心」という層が厚かったかもしれないが、今はそれほどでもないようだから、「リベラル」の側も選挙の方便として上手に幅を拡げることができるのではないだろうか?

■ 説得と選挙戦略

 もう一つ、「リベラル」側の人には、他人を説得しようとする傾向が強すぎるような気がしている。
 選挙が遠い段階では自分の考えを広めるための政治活動も効果的だろう。しかし選挙が近くなると、自分の意見への賛同を増やすより、多くの国民の主張を取り込むような選挙戦略が必要になると思う。図解で言えば、元になる国民の意見の比率(図では2:6:2で示した)を変えていくのが説得的活動であり、その比率を所与として投票者の幅を拡げるのが選挙戦略になる。
 小沢一郎氏のもとで育った若手議員が異口同音に「辻立ち」を強調しているのは、そのような意味を持つのではないだろうか。辻立ちは、自分の主張を国民に拡げる活動をしつつ、どの言葉にどういう反応があったかを感知することで、どの辺に世論の重心があるかを見極め選挙戦略に反映させる意味を持つように思われる。
 まあ、今回の選挙では小沢氏の神通力も通じなかったようだが。

■ 複雑な現実への対応

 政権交代というと1枚岩の2つの政党が争うイメージを持つ人がいるかもしれない。しかし自民党を見ればわかるように、政党同士の争いが決着したら派閥同士の争いがあり、また時期に応じて派閥内での勢力争いもある。一枚岩では決してない。
 そもそも日本人だけで1億人、世界には70億人の人類がせめぎ合っているのだから、権力闘争だってシンプルに決まるはずがないのだ。それゆえ現実は、さまざまな線引きを複雑に組み合わせたものになるのであって、上記分析はごくごく単純化したイメージにすぎない。
 ただ、一つ明確に言えるのは、線引きするあらゆる局面において自分が多数派になるよう努力することが政治には必要だということだ。そして自分が多数派になる方法として説得は一つの方法に過ぎず、論点の選択や幅の取り方も重要になるし、線が引かれたらそのどちら側に立つかといったことも考える場面があろう。

■ 私自身の政治的立ち場について言い訳的に

 これまで私はエネルギー政策について政策提言をし、政策の立案過程や実施過程に関わる活動をしてきた。しかしここに来て、政治過程にもう少し深く関わることが避けられないようだ。
 議会制民主主義を採る以上、政権を担える複数の政党があり政権交代が起きることが必要だというのが政治体制についての私の考えである。「リベラル」かどうかはわからない(多分、リベラルではないと思う)が、自民党に対抗して継続的に政権を担いうる政治勢力を育てることを急がなければならないと思っている。

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