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尖閣諸島に関するオスプレイの運用についてわからないこと

 愛読している冷泉彰彦氏のレポートが、今話題のオスプレイに触れていた。
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2012/10/post-485.php
 この記事に限らず同機の効用を航続距離・速度・積載量だけで語る文章を時々見かけるのだが、軍事シロウトの私にはどうもよくわからない。民間機ではなく軍用機なのだから、どういう状況で使用されるかを考慮せず、無人の野を行くがごとく航続距離を考えても意味がないのではないだろうか?

 沖縄本島から尖閣諸島にオスプレイを飛ばすとしたら、どういう状況が考えられるのだろう?

1.尖閣諸島について想定される状況
 まず、輸送先の尖閣諸島の状況。オスプレイが着陸もしくは空挺部隊を降下させる状況とはどんな状況だろうか?
(1)敵対的勢力の人員がいない状況
 この状況では、軍人を輸送する必要はないし、都庁職員がオスプレイで出張することも考えにくい。
 灯台などを建設する場合も、物資の輸送には船舶を使う(上陸にヘリを使うとしても軍用輸送機を使うことは考えにくい)だろうから、出番はなさそうだ。
(2)敵対的勢力の人員がいる状況
 次に敵対的勢力の人員がいる状況。尖閣諸島の写真を見る限り、騒音の出るオスプレイが上陸者に気付かれずに人員を輸送することは困難(新月の夜であっても)だろうから、着陸するにせよ落下傘を使うにせよ、自動小銃以上の装備で武装した敵対的勢力がいる状況で、兵員を到達させることは困難であろう。したがって、敵対的勢力の人員がいるとしても民間人を想定すべきだろう。警察官などである意味はあまりなく(警察官が民間人を装うことはある)、武装もせいぜい拳銃程度。
○想定
 尖閣諸島に敵対的勢力の民間人が上陸している状況を想定する。

2.尖閣諸島周辺について想定される状況
 輸送機は攻撃に弱いので、周辺に敵対的勢力の航空機・艦船(輸送ヘリへの攻撃能力を持つもの)が存在しないことが条件になるだろう。
(1)敵対的勢力の戦闘機、戦闘艦が出てきていない状況
 敵対的勢力が、戦闘機・戦闘艦を派遣せず、1(2)、すなわち民間人を尖閣諸島に上陸させたというケース。この場合、日本の領海や周辺海域に、軍用でない(海上警察はあり)船舶・航空機が多数存在することを想定する必要がある。ただし航空機には大きな意味がないと思う(民間航空機は他の航空機の接近を阻む力がない一方、船舶は船体をぶつけるなどの方法を使える)ので、主に船舶の存在を想定する。(この状況でオスプレイで人員を運ぶことの意味を次項で考える)
(2)敵対的勢力が、輸送ヘリへの攻撃能力を持つ航空機・艦船を派遣してきて、それを追い払ったケース
 これはもう小規模な戦争。日本の領海・領海周辺に敵対的勢力が攻撃用航空機・艦船を派遣し、それを日米で追い払う、つまり、自衛隊・米軍が武力で排除したケース。しかし、輸送ヘリへの攻撃能力を持つ航空機・艦船を派遣しておいて、上陸するのは民間人、という想定はかなり考えにくい。
○想定
 日本の領海や周辺海域に、敵対的勢力の軍隊は来ていない、海上警察や民間の船舶が多数来ている状況を想定する。

3.オスプレイで輸送する人員の想定
 以上の想定において、どういう人員を輸送するのだろうか。
(1)民間人・一般公務員
 マスコミがインタビュー? 想定し難い。
(2)海上保安官・警察官
 海上から接近し難い状況下であっても、海からのアプローチが筋であろう。上陸した民間人より、まずは周辺海域にいる船舶の排除が優先されるはずだ。島に接近できないくらい敵対的勢力の船舶が密集していたら、空から着陸してもあまり意味はない。
(3)軍人(自衛隊員・米軍人)
 (2)と同様、実質的な意味がないと思う。
 しかも、敵対的勢力が民間(偽装だとしても)の船舶しか出さず、民間人しか上陸していない状況で、軍用機を使って軍人を輸送したとしたら「日本(日米?)が先に軍事攻撃を仕掛けてきた」という名目が成立し、戦争になるだろう。
 戦争を覚悟の上での行動だとしたら、歩兵を尖閣諸島に上陸させることよりも、周辺海域に軍艦を派遣して制海権を確保することの方が優先されるのではないだろうか。

4.結論
 オスプレイを使って人員を尖閣諸島に輸送する状況は想定できない。

 ということで、シロウト考えではオスプレイを尖閣諸島に派遣する想定は考えられませんでした。この検討内容のどこかに問題があるかどうか、詳しい方からご指摘をいただければありがたく存じます。

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