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FITへの建設的批判にのぞまれる論点整理

 今年7月1日に施行されたFIT法について、本ブログでこれまで何度も私見を述べてきた。
 それがようやくスタートして、自分の専門分野である小水力発電の開発に注力しているところだが、同時に、買取りの設定価格等に対する批判も耳にするようになった。
 本ブログでも書いたように、FITという制度で最も重要なのはチューニングであり、批判が存在することには大きな意義がある。しかしながら、批判の矛先がずれた方に向かうと非生産的な議論に陥る可能性もある。
 そこで、FIT制度を批判する際の論点の位置づけを整理することにする。

 考慮すべき主な論点は以下のように整理できるだろう
(1)FITという制度それ自体への批判
(2)FIT法の修正時に追加された「施行の費から起算して3年間(中略)特定供給者が受けるべき利潤に特に配慮する」(附則第7条)への批判
(3)買取価格算定方法のうち、「通常要する費用」の算定方法への批判
(4)同、「平均的な発電電力量の見込み」の算定方法への批判
(5)同、「適正な利潤」の算定方法への批判
(6)同、「調達期間」への批判
(7)その他。

 このうち、(1)については、FIT制度を導入すべきかどうかという議論の中で論じられてきたことであり、それを経て国会で立法されたことであるから、批判に当たってはこれまでの議論をふまえて批判していただきたいと思う。このブログで私が述べてきた「FITを導入すべき」という論拠への批判も歓迎である。

 (2)については、私もおおいいに疑問を抱いており、法を再改正してここだけ削除できるものならしていただくのがよいと考えている。ただし現実問題として、「成立した法律の中の『当初3年間』と区切った条文について、3年以内に施行できるような改正を国会に働きかける」というロビーイングは現実的だと思えないところだ。

 (3)については、調達価格等算定委員会第7回配布資料2に、次のように書かれている:
========================================================================
■ 費目の範囲については、コスト等検証委員会で議論された費目に、①再生可能エネルギー発電事業者側で負担すべき接続費用、②土地の賃借料、③法人事業税を加えたものとした。
■ 費目ごとの費用額は、コスト等検証委員会の試算結果があるものについては、これを基礎としたが、分野ごとに合理的な事情が認められる場合については、その修正を行うこととした。
========================================================================

 そして、「コスト等検証委員会」(国家戦略室)が発電コスト算出のために使用した「通常要する費用」は、下記ページにおいてエクセルシートとして公開されている:
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive02_shisan_sheet.html
(余談:政府に対して批判的立場の市民運動に30年間関わってきたが、政府がここまで根拠をオープンにするのはきわめて珍しい)
 また、コスト等検証委員会で議論されなかった、上記配付資料①~③については、委員会でのヒアリング結果等から算出した建設費・運転維持費の「仕上がり」の金額がコスト等検証委員会の金額の幅に収まっているケースが多く、ほぼこれに沿って結論を出している。

 したがって、(3)の論点で批判する場合、コスト等検証委員会や調達価格等算定委員会第6回委員会ヒアリング資料等に対して具体的に「ここの金額はこの程度の額にすべき」といった形で批判を行うべきだと思う。

 (4)~(6)についても、(3)と同様、上記資料の個々の内容に即して批判すべきであろう。

 ちなみに、私自身は小水力発電に関して第4回委員会で意見(「仕上がりの金額としてコスト等検証委員会報告にもとづく算出は妥当である」)を述べており、その際使用したスライドが下記ファイルとして掲載されている:
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/004_04_00.pdf

 なお、IRR計算は慣れないと難しいし、コスト等検証委員会の計算方法(割引現在価値によるコスト計算)と異なってくるので、参考のために簡易計算表(オープンドキュメントのワークシート)を以下にアップロードした。適宜ダウンロードしてお使いいただきたい。PMT関数を使った単純計算で、住宅ローン計算と大差ないもので恐縮だが。
(zipファイルです)
「calctabl.zip」をダウンロード
(zipファイルが使えない環境の方は、下記リンク先をファイルとしてダウンロード保存して下さい)
「calctabl.ods」をダウンロード

 ダウンロードしたファイルには、100~200kW程度の小水力発電でありそうな金額を入れてあります。「設定値」を書き換えてお使い下さい。

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