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「放射能」という言葉の使い方について

 「放射能」という言葉は、一般の文脈ではおおざっぱに使われがちであり、何を意味しているか気をつけないと間違って理解する危険性がある。「放射性物質」という言葉を使うべきところで「放射能」と言ったり、「放射線」を「放射能」と言ったり、物理的によくわからない意味で「放射能」と言ったりすることに気をつける必要がある。
 しかし一方、正しく使えば意味を持つ概念なので、どのような使い方が正しいか、について、自分の基準を書き留めておくことにする。

 理科年表の物理の部の最初に単位について記載されている。
 「最初に」というところに実は大きな意味があり、物理屋にとっては単位(次元、dimension)が最も重要な基盤になっているといっていいが、これは別の物語。いつか別のスレッドで書くことにしよう。

 さて、理科年表には、放射能の単位がBq(ベクレル)だと書いてある。
 このことを逆に利用したいと思う。つまり、「ベクレルという単位で測られる量を放射能とよぶ」と決めればよいのだ。

 原発事故に関連して使われる言葉で言えば、大気・水・食料・土壌などに含まれる放射性物質の量を言うときに、kg/m3, mol/m3, kg/kg, mol/kg といった単位の数値を使う場合「放射性物質濃度」という言葉が妥当なのに対して、Bq/m3, Bq/kg といった単位を使うなら「放射能濃度」という言葉が妥当であろう(文脈によっては当てはまらない場合もあるかもしれない)。

 ここで次の記述の用語法を題材に考えてみよう。専門家が書いたあるスライド(ネットで見つけたもので、出所の確認はしてない)の中で

   「放射能漏れ」と言う言葉はありません!
   この点に関して、マスコミはいつもデタラメ
  放射能とは、
    放射性物質が放射線を出す能力のこと。
   「放射性物質漏れ」が正しい。

と書かれたものがあった。厳密な用語法としては、確かに「放射線を出す能力」が「漏れる」というのは不自然だ。
 しかしながら、私たちの関心が漏れた放射性物質そのものではなく、その放射性物質から放出される放射線に限定されているとしたらどうだろう。たとえば、フクイチ事故由来のヨウ素そのもの、セシウムそのものに対する関心はほとんどないと思う。フクイチ事故で放出された放射性物質の放射能量を「○○京ベクレル」と書いた報道は読んだことがあるが、「放出されたセシウム137は○○キログラム(モル)」と書いた報道を読んだ記憶はない。

 厳密に言えば「放出されたセシウム137の放射能は○○ベクレル」とか「放出された放射性物質の放射能総量は○○ベクレル」というのが正しいわけだが、「放射能○○ベクレル」に関心が集まっていることを前提とすれば「放出された(漏れた)放射能は○○ベクレル」と略記してかまわないと思う。少なくとも「デタラメ」と批判するものではなかろう。

 とりあえず一つの事例を批判的に取り上げながら検討したが、「放射能」という言葉の使い方はかなり難しいので、今後も何か気付くことがあったら追記を加えていきたいと思う。
(2012年1月9日記)

【2012年1月9日付記】
 いきなり付記です(^^;)

 経済における割引率はゼロにすべき、という立場を取っていますが、環境への放射性物質放出量の評価については割引率を使うのもありかもしれません。長寿命核種と短寿命核種を環境放出時点でのベクレルで比較すると短寿命核種が過大評価される一方、生涯放出総量のカウントで比較すると長寿命核種の過大評価になるからです。
 その中間を取るために、割引率○%での現在影響換算総放出量(単位はカウント)という数値を使うのは妥当ではないでしょうか(○%はどれくらいが適切?)。

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コメント

寿命の異なる物質の放射能(注意して使ってみました・笑)の比較は、GWPみたいな概念を導入するといいのかもしれません。GWP100は100年間の能力の積分で、50とか20もあり得ます。人間の健康影響として意味のある数字は20とか、もっと小さくて10くらいじゃないですかね。

投稿: 余談 | 2012.01.10 03:47

余談さま
 コメントありがとうございます。
 環境に放出してしまった「悪さ」の評価を想定しているので、個人の健康被害よりは長い時間スケールで考えたいと思います。
 割引せずに100年間の総カウント数というのも一つの考え方ですね。未来の世代を重視するなら、300年(セシウム137がほぼゼロになるまで)の総カウント数というのもいいかもしれません。
 プルトニウムのライフタイムで考えるのは、さすがにどうでしょうか? もちろん、未来を重視する方はそういう立場に立たれるでしょうが。

投稿: dai(本人) | 2012.01.10 11:33

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