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石油火力発電燃料代の計算方法

 本ブログでは毎月石油火力発電の燃料代を算出している。その算出方法やデータの使い方について、説明します。

■基本的な考え方

 基本的な考え方は単純で、次の方法によっています。

○単位電力量1キロワット時(kWh)=3.6メガジュール(MJ)
   ÷発電効率     ・・・1kWhの発電に必用な石油の発熱量が、メガジュール単位で出ます
   ÷石油の発熱量  ・・・必用な石油の量がキロリットル(kL)単位で出ます
   ⇒バレルに換算  ・・・キロリットルからバレルに換算します(1バレル=0.159キロリットル)
   ×石油価格     ・・・金額(ドル)に換算します。
   ×ドルレート     ・・・金額が円単位になります

 ただし、A・C重油については、国内の単価(円/キロリットル)を使うので、バレルに換算せず、ドルレートも関係ありません。
 また、 「石油」と書きましたが、原油・C重油・A重油でそれぞれ発熱量も異なります。毎回書いているように、発熱量の数値は経済産業省資源エネルギー庁の「エネルギー源別標準発熱量表」(下記URL)から「発電用原油」「発電用C重油」「A重油」の値を使っています。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/jukyu/resource/pdf/070601.pdf
【2011/10/03 追記】
 上記ホームページの移動があったので、修正しました。
【追記終わり】

■発電効率が難しい

 悩ましいのは発電効率の数字です。
 まず、発電効率には「発電端効率」「送電端効率」「受電端効率」の3種類があります。水力・風力のように発電所内でほとんど電気を使わない場合には発電端効率と送電端効率に大差ないのですが、ボイラー式火力発電(汽力発電)の場合、燃焼用空気の送風機、冷却水循環ポンプ、公害防止設備など電力多消費設備(補機といいます)が多く、発電した電力の数%~10%くらい(所内率と言います)を消費してしまいます。発電した電力が発電所の出口(送電端)に届く前に、所内である程度消費してしまうというわけです。数式で表すと

  送電端効率=発電端効率×(100%-所内率)

となります。
 さらに、発電所から消費地まで運ばれる間に、変電所や送配電線で熱に変わって逃げてしまう分もあるので、それを考慮して算出した効率が受電端効率とよばれます。
 3とおりの効率の使い分けとしては、次のように考えられます。

○発電端効率
 ボイラー効率やタービン効率など、発電機器の効率を検討する際には意味を持つけれど、社会システムとして発電を分析する際にはあまり意味を持たない。

○送電端効率
 発電方式同士を比較する際に一般的に使われる効率。ただし、消費地に設置する太陽光発電やコジェネレーションと比較する場合には受電端効率を使う場合もある。

○受電端効率
 消費されている電力量1kWhが上流側でどのような影響(CO2排出、燃料代など)に結びつくかを検討する際に使う。

 私が書いている「火力発電燃料代」は、小水力・風力・地熱等との比較を主目的に想定しているので、送電端効率を採用しています。
 
■具体的な発電効率の数値を決めるのも簡単ではない

 火力発電所の発電効率について、以前は「電力需給の概要」という政府刊行物の中で、発電所ごとの値が公表されていました。しかし近年、電力自由化に伴って、「民間企業の経営上の秘密」という理由で公表されなくなってしまいました。私の手許にあるのは平成13年度版で、これには掲載されています。
 10年前のデータでちょっと古いのですが、石油火力発電所はほとんど新設されておらず、改造で効率向上という話しも聞かないので、ここから取った数字を使って大きな問題は生じないでしょう。

 ということで、「平成13年度版電力需給の概要」(経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部編)中Ⅱ-25という表に出ている、一般電気事業者10社(北海道電力~沖縄電力)の49の石油火力発電所データから、標準的な送電端効率の数値を算出することにします。ただし、極端に所内率が高い発電所や、当該年度の実績がない発電所は除きました。
 そして得られた数値は、19.2%から37.2%と、かなりばらつきがあります。

 ばらつきが生じる原因として、設備利用率と運用開始年次が影響しているのではないかと考えました。石油火力は需給バランスを取るために、出力を変動させながら使うことが多いと考えられます。これが効率を低下させる可能性がある。運用開始年次については、経年劣化や技術進歩の影響を想定したわけです。
 設備利用率と送電端効率、運用開始年次と送電端効率の2とおりのグラフ(散布図)は、以下のようになりました。(pdfファイルです)

クリックして2つの散布図をダウンロード

 2つのグラフから読み取れるのは、運用開始年次はあまり関係ないことと、設備利用率が10%を超えれば効率に大きな差はないこと、そして送電端効率は35%程度の値を採用するのが妥当だろうということです。

 これまでは「大きめの数字を使っておけば文句は出ないだろう」くらいに考えて38%という暫定値を使ってきましたが、今後はもう少し緻密な議論に使いたいと思うので、この35%という数値を使うことにします。
 7月2日付けの記事「2011年6月の石油火力発電燃料代」も、この数字で再計算しておきます(それ以前のページは放置)。

 今後のエネルギー需給について議論する際、この数値を指標として使っていこうと考えています。(あくまでも指標です、念のため)

【追記 11/07/04 15:50】
 櫻井啓一郎さんに相談したら、もう少し高めの値を使っているとのこと(下記ブログ先頭の「興味のある向きはどうぞ」からダウンロードできます)。35.5%とか36%とかにしようか、悩み中。
櫻井啓一郎さんのブログ2008年8月21日の記事

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