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尿中の放射能濃度データの使い方

 尿中の放射性セシウムに関する先の論考を書いてから、ふと思った。サーベイメーターの積分回路と人体は類似の積分装置として機能している。つまり
 GM管(パルス信号)->積分回路-> 針式電流計
 経口摂取(変動量)-> 人体 -> 尿の放射能濃度
というメカニズムだ。
 この着想をもとに、食品の放射能汚染が避けられない状況下での安全管理について少々考えてみた。

 最初に、本稿では個人の衛生管理(公衆衛生ではなく)に焦点を当てるという立場をあらかじめ明記しておく。

 さて、食品や飲料からの被曝量を低減させるためには、食品・飲料の放射能濃度を管理するのが基本、というのは当然だ。最近でも牛肉の放射能汚染がニュースになっていた。
 しかし、この方法には大きな制約がある。
 まず、個人の放射能摂取量を正しく管理しようとしたら、毎日の食卓に並んだ料理そのものの放射能量を測定しなければならない。もちろん不可能だ。
 食材についてはどうか。これはサンプル調査にならざるを得ないし、収穫した畑や時期ごとのばらつきがかなり大きいと推測される(たとえば、雨水の流れ方で土壌汚染に大きな差が出ている)のに対して検体の数量を充分多く取るのは困難であろうから、あまり精度が期待できない。

 これに対して尿中の尿中の放射濃度測定は、その人が経口摂取した放射能量そのものを測れるという利点がある。毎度の食事や飲料から吸収した放射能の量の累積値が推測できるのである。
 一方、尿検査の最大の弱点は、予防に使えないことだ。「食べてしまった量」を測っているので、汚染の強い食品・飲料を回避するための指標としてはまったく使えない。

 そこで考えたのだが、両方の手法を組み合わせるのが良いのではないだろうか。
 まず、個人管理の基本は尿検査に置く。定期検診や任意の検査で、気軽に尿中の放射能濃度測定を受けられるようにし、これで「食べてしまった量」の管理を行う。そしてこの量が高くなってきたら、食品種類や産地への注意を高くし、検査頻度を上げて値が下がるのを待つ。
 一方、汚染が推測される地域では、可能な限り広範でサンプル数の多い検査を行う。この場合、今行っているような「暫定基準値を超えたかどうか」という判断ではなく、標本標準偏差から推計して「0.5%確率でこの量を超えない」という基準を設け、それを越えたら出荷停止措置を取るか、畑単位の検査のようなより精度の高い方法で「救える物を救う」措置を取る。これにより、強く汚染された食品の摂食確率を管理するのである。(※1)
 もちろん、消費者に対して代表値(平均値?)の表示も合わせて行う。

 現実に汚染が存在する状況下で生活しなければならないのが現実だ。この問題提起がご参考になれば幸いである。

(※1)
 本稿の論旨からは外れるが、このように統計的手法でリスク管理すると「費用をかけサンプル数を増やした方が生産者の利益が増える」という点でも意味がある。
 少ないサンプル数で「全数が基準値以下だから安心」という手法は、予算をけちってサンプル数を減らす方向に誘因が働く。

【2011//7/20 「尿検査データの使い方」から改題】

【2011/07/24 追記】
 肉牛の全頭検査が話題になっている。人の代謝について「生物学的半減期」モデルが適用できるなら、おそらく牛も同様であろう(半減期の長さは異なるだろうけど)。つまり、生きているうちに尿を検査すれば、体内の放射性セシウム蓄積量が推計できるわけだ。
 食品安全という意味では食肉段階での検査が原則だが、畜産経営の観点から言えば生きているうちに蓄積量を把握することの意味は大きいのではないか。

 また、上記の通り人間の健康管理の点でも尿中放射能濃度検査に意味があり、検査方法は人でも家畜でも同じだろうから、方法を標準化し数を稼ぐことで検査コストを下げる利点もある。
【追記終わり】

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