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放射線防護に関する覚え書き

 放射線防護について、情報へのリンクやそれに関するコメント、自分の考えなどを随時積み上げていくための覚え書きです。

【原典へのリンク】
○国際放射性防護委員会 ICRP
ICRPホームページ
から、適宜拾ってリンクを張る

○欧州放射線リスク委員会 ECRR 2010年勧告
ECRRホームページ
日本人向けの(ただし英語の)ページも上記に張ってある(2011-06-19現在)。
その中に、2010年勧告の和訳(ECRR2010翻訳委員会訳、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会発行)がリンクされている。下記:
http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm

○アメリカ科学アカデミーの低線量リスクに対するレポートはここ(サマリがただで読める)
Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR VII Phase 2
http://books.nap.edu/catalog.php?record_id=11340

○日本学術会議会長談話(2011-06-17付)『放射線防護の対策を正しく理解するために』
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdf

【コメント・考察】
[2011-06-19]
■嘆き
 まず最初に、欧州放射線リスク委員会やアメリカ科学アカデミーのような仕事が日本国内でなされていないこと嘆いておこう。

■低線量における閾値の扱い
 国際放射線防護委員会・欧州放射線リスク委員会・アメリカ科学アカデミーに共通するのは、低線量被曝に関して被害に閾値がないとすべきとしている点である。
(「ない」と断言しているわけではない。たとえば欧州放射線リスク委員会は、ホルミシス効果=一定以下の被曝が発がん確率を下げる効果=は存在するかもしれないとしつつ、放射線防護の観点からは考慮すべきでないと結論づけている)

 そして日本学術会議会長談話(2011-06-17付)では、上記同様閾値(しきい値)がないという立場を明言した上で、積算線量(時間あたりでないことに注意)について、「積算被ばく線量が1000 ミリシーベルト(mSv)当り、がん発生の確率が5%程度増加することが分かっています。すなわち、100 mSv では0.5%程度の増加と想定されますが、これは、10 万人規模の疫学調査によっては確認できない程小さなものです」と述べている。
 ここはとても重要な点だ。数値については諸説あるだろうが、一定の積算被曝線量で無視できない発がん確率を引き起こすことと、疫学的に確認できない低被曝線量についても、閾値のない悪影響(何らかのモデルでしか数値化できない)が存在するという立場を示しているからである。

 低線量被曝のような確率的被害に関しては、個々人の価値観にもとづく判断しかできず、政府が一律の基準を定めるのは難しい。たとえば受動喫煙の被害についても、徹底的に拒否するのも個人の権利だし、ある程度妥協するのも一つの生き方だろう。

■科学者によって意見が異なる前提での、政治的意志決定への提言
 もう一点、日本学術会議会長談話(2011-06-17付)に「ICRP が定めた放射線防護の考え方は、多くの科学者の異なった意見を取りまとめたものであり」と書かれていることにもコメントする。

 これは、地球温暖化(気候変動)問題に対してUNFCCCがIPCCを設置した論理と共通する。つまり、当該分野周辺の特定の科学者グループに結論を出させる方法ではなく、幅広い専門家を集め、関連するできるだけ多数の論文をサーベイさせて現時点で確からしい結論(政治的決断に対する助言)をまとめる方法を採用する、という方法論に近い立場だろう。
 温暖化問題でも放射線防護でも、一部の科学者が出した結論を振りかざして主張する論者も多いが、意志決定手法として国際的に採用されているのは、できるだけ幅広く科学的主張を集めて分析するという方法論になってきているし、私もそれが正しいと考える。

■学術会議への批判
 日本学術会議会長談話(2011-06-17付)には「しかし、X 線やCT 検査など医療目的の放射線については、医療用の放射線を被ばくする患者自身が受ける健康上のメリットが、そのデメリットよりも大きいので、この線量限度は適用されません」と書かれているが、日本では放射線を使った検査が過剰であるという批判、つまり検査の種類によってはデメリットがメリットより大きいという批判もある。私自身、20代での胸部X線検査は病変発見メリットより発がんリスクデメリットの方が大きいと聞いたため、定期健康診断でX線検査を拒否した経験がある。
 この機会に、医療用放射線のメリットとデメリットについて、学術会議の力で定量的評価をしていただきたいと考える。

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