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エネルギーが「再生可能」であることの物理的意味(3)

 第3回は地熱・潮汐力について考えます。再生可能エネルギーの大部分は太陽からの日射エネルギーを高熱源(低エントロピーエネルギー源)としているのに対して、地熱は地下深部の放射性物質が出す崩壊熱を、また潮汐力は地球の自転エネルギーを源としています。
 Wikipedia で「地球のエネルギー収支」という項目を見ると、前回定義した「地表圏」に対して太陽から流入するエネルギーが174PW(ペタワット)=174,000TW(テラワット)であるのに対して、地熱からが23TW、潮汐からが7TWだそうです。そして化石燃料が13TW。

 さて、今回検討するのは:
(1) 地熱は地下から取り出す高温(地表圏の温度と比べて)の熱
(2) 潮汐は月・太陽の潮汐力の影響を受けて変位する海水と、その影響をほとんど受けずに自転する地表との間の摩擦に相当するエネルギー
です。

 (1)も(2)も、地表圏に流入する低エントロピーのエネルギーという意味では、日射と何ら変わりはありません。したがってここで論ずべきことは、その持続可能性でしょう。「再生可能」と言うからには、長期にわたって安定的である(資源制約を考慮する必要がない)ことが必須条件です。
 ここで、「長期」という概念がくせ者です。太陽だっていつかは白色矮星になるわけですから、永遠に再生される訳ではない。
 一方、太陽も地球も、億年単位(天文学的時間で)変化していることも重要です。古生代の始まりが5億年くらい前だということを考えれば、ホモ=サピエンスにとって億年という時間は永遠と言っていいのではないでしょうか?

 この辺が物理屋と数学屋さんの違いが際立つところです。数学屋さんが「無限」「ゼロ」と言ったら、無条件に無限・ゼロでなければならないのに対して、物理屋は「充分に大きい」=無限、「無視できるほど小さい」=ゼロと気軽に扱ったりします。
 昔聞いた話ですが、物理現象を行列式に乗せた上で「これを無限次元にすると、、」という論文を物理屋が書いたところ、数学屋さんが「ごるぁ!」と怒鳴り込んできたそうです。次元をどうやったら無限にできるのでしょうね。

 さて、地下深部で発生する熱量の安定性は、ホモ=サピエンスという種の安定性よりもずっと長い時間スケールで安定、と言っていいでしょう。むしろ、人為的に地下の高熱源を利用したときに、地下深部からの湧出量とのバランスが取れるかどうかは課題(蒸気井が「冷めてしまう」問題)だと思います。

 一方、潮汐エネルギー。
 地球の自転エネルギーは、人間が利用しなくても7TWが摩擦熱に変わり、その分自転が遅くなっているという収支計算です。では、そもそも地球の自転エネルギーって、どれくらい?
 均一な球体の回転運動エネルギーは、多分次の式で表されます(積分計算に自信がないので、「多分」です。どこかに公式集があったはずだけど、、、)。
  ○球体の回転運動エネルギー=1/5×質量×(半径)^2×(角速度)^2

 Wikipedia から、地球の質量を 6×10^24 [kg]、半径を 6.36×10^6 [m]とし、
角速度を7.27×10^-5(2Π÷24÷3600)として上の計算をすると、2.57×10^29 [J]となります。
 一方 7TW を年間に換算すると 2.21×10^20 [J] なので、潮汐運動による摩擦損失の10億年分の自転エネルギーがあることになります。実際には、自転が遅くなると潮汐損失も小さくなるので、自転が止まる(月の公転周期と一致して安定する)までの時間は10億年より長いでしょうが(ただし、マントル対流の摩擦などを考慮していない)。
 人間が潮汐エネルギーを利用した場合、この損失が追加的に増えるかどうかなのですが、感覚的に言って、少し増えると思います。ただし、利用した分が丸々増えるのではなくもともとの損失が何%、あるいは2-3割増える程度でしょうし、しかも地球上のすべての潮汐摩擦損失のうち人間が利用できる部分はかなり限られるはずなので、潮汐発電を行うことによって地球の自転が追加的に遅くなる、という量は無視してよいと考えます。
 潮汐エネルギー利用は、1億年のスケールで安定的と言えるでしょう。

 以上の検討から、地熱と潮汐によって地表圏に流入するエネルギーを人間が利用することについて、「再生可能」と表現して差し支えないと思います。

 3回にわたって検討した結果、地表圏を熱機関モデルで考えたとき、日射・地熱・潮汐による摩擦を高熱源として利用する(低熱源は上空で宇宙への放射)ことに関して、「再生可能」という表現をとることは妥当だ、という結論が出せました。

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