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セシウム137による被曝線量

 「セシウム137の半減期は約30年と長いが、体内に入っても排出されるので心配ない」などと言われる。「心配ない」と決めつけられると不安になるのが人情。どれくらい危険なのだろう。

 チーム中川によれば、排出を考慮した実効的な半減期は100日程度という。逆にこのことを、「100日以上体内に留まる」と書いている記事を見た記憶があったり、野尻美保子先生が「一旦摂取すると100〜200日程度体内に残りますが」と書いていたりする。

 この辺の意味を自分なりに整理しておきたい。

 まず、出典。
 チーム中川の「実効的な半減期は100日程度」は
http://tnakagawa.exblog.jp/15135577/
 野尻美保子先生の「一旦摂取すると100〜200日程度体内に残りますが」は
http://nojirimiho.exblog.jp/13171172/
 あと、マイブログの先行する記事も必要に応じて参照する
http://energy-decentral.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-a8ec.html

 さて、体内に吸収した放射性物質から吸収(被曝)する線量は
  吸収線量総量=初期放射能×時定数
で算出される。半減期と時定数の間には 時定数≒半減期÷0.693 (半減期×1.4427) という関係があるので
  吸収線量総量=初期放射能×半減期÷0.693
と書くこともできる。

 生理的な実効半減期が100日ということは時定数が144.27日であるから、初期放射能からの放射線を144日間浴び続けるのとほぼ同じ意味を持つので、「100日以上体内に留まる」「一旦摂取すると100から200日体内に残り」といった表現も妥当だといえる。

 そして、144.27日≒12,465,000秒であるから、1ベクレルのセシウム137を吸収すると、12,465,000カウントのβ線を吸収することになる。

 次に、セシウム137が放出するβ線のエネルギー量が必要になるのだが、私のような一般市民が当たれるデータブックは理科年表くらいであり、半減期は書いてあってもエネルギー量は書いていない。
上記ブログ記事について早野先生から「しっかりした一次情報に当たれ」というコメントをいただいたが、ここでは原子力資料情報室のホームページ
http://cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/13.html
で済ませることにする。2次情報ではあるが、信頼性は高いと判断した。
 これによると2つのエネルギースペクトルがあるようだが、平均(0.514×94.4%+1.18×5.6%)すれば0.551Mevとなる。したがって、吸収線量をエネルギー単位で表記すれば
 0.551MeV/count×12,465,000count×1.602e-13 J/MeV = 1.101μJ
ということになる。簡略化のために、以下ではこれを 1μJ として計算する。
 1ベクレルのセシウム137が60キログラムの人体に均等に分布した場合、1/60マイクロシーベルトの総吸収線量ということになる。

 チーム中川の別の記事
http://tnakagawa.exblog.jp/15214540/
には「セシウムは、飲食物を通じて体内に取り込まれると、ほぼ100%が胃腸から吸収され、体全体に均一に分布します」と書かれている。
 したがって、摂取した食物中のセシウム137放射能をベクレル単位で出し、これを体重で割ることで、吸収線量(被曝量)がマイクロシーベルト単位で算出されることになる。

 上記マイブログで計算したヨウ素131の場合、1ベクレルを体内に吸収した場合の甲状腺の被曝量が2.3マイクロシーベルトであったのに対して、セシウム137では体重分の1であり、体重が50キログラムであれば0.02マイクロシーベルトということになる。
 しかしながら、食べたり吸ったりしたヨウ素のうち、吸収されて甲状腺に到達する量は1%程度らしい(いろいろな数字を見て判断)のに対して、食べたセシウムはほぼ全量吸収される(チーム中川)ので、食べたり吸ったりする前の量(摂取放射能量)で比べると、ヨウ素131とセシウム137の影響は同程度と考えることができる。

■結論
 食べてしまったセシウム137の量をベクレル単位で算出し、それを体重で割ると、マイクロシーベルト単位の吸収線量(被曝量)になる。
 したがって、体重70kgの私の場合、70×24時間=1,680ベクレルのセシウム137を毎日(追加的に)食べ続けると、外部被曝線量が平均的に毎時1マイクロシーベルト増加したのと同じ被曝量になる。
【20111/4/12 10:10追記】
 年間1ミリシーベルトの基準から考えると、私の体重では1食あたり50ベクレルくらいを上限にするのが目安。
【追記終わり】

■感想
 1秒間に1,000発のタマを受けると考えるとスゲー被曝した気になるけど、MeVが10のマイナス13乗単位という換算をすると、とたんに数字がぐぐぐーっと小さくなる。とはいえ、DNAは分子だから、MeVでも影響を受けるはず。進化過程で習得した修復能力に感謝。

■付記
 以上の計算では、セシウム137の物理的な半減期(約30年)が、チーム中川の言う人体での実効的な半減期100日より充分大きいという前提を使っています。
 セシウム134の場合半減期が約2年であり、100日と比べて充分大きいとまでは言えません(約7倍)が、疫学的危険性の評価であれば倍半分程度の精度で議論すればいいと思うので、同じ方法で計算してかまわないと思います。

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コメント

質問です。
何故体重で割るのでしょうか?
例えは爪先にたどり着いた放射性物質は体重に関係なく、頭の先まで影響するとおもうのですが???
出来たらメールにて答えて頂けると幸いです
(放射能は全くの素人です)
私が計算したのは
国際基準の1mSV/年を越えない一日の許容内部被ばく値nは
n×100÷2+n×100×(365-100)=1000μSV
n=0.039μSV

かりに、これから口にする物はセシウム137のみと仮定したとして
セシウム137の人体に及ぼす放射線は
10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトだそうだから

n=10000×0.039÷130μSV(0.13mSV)
n=約3ベクレル

となりました

体重を考えると210ベクレルとなりますが、、、?

投稿: 高槻 | 2011.05.09 23:06

高槻様
 コメントありがとうございます。

 メールでの直接のやりとりはご容赦下さい。コメントでお返しします。

 シーベルトというのは吸収線量(より正確には吸収線量当量)であり、1kgの物体(人体)がどれだけのエネルギーを放射線から吸収するかを測る量です。したがって、放射線の量を、それを受け止めた質量(体重)で割って算出するようになります。

 本文中に「したがって、摂取した食物中のセシウム137放射能をベクレル単位で出し、これを体重で割ることで、吸収線量(被曝量)がマイクロシーベルト単位で算出されることになる。」と書きました。
 一方高槻さんは「10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトだそうだから」と書いておられます。
 体重が70kgだとすると、10,000ベクレルを70で割れば約140マイクロシーベルト=0.14ミリシーベルトになります。本文に書いたとおり、ここでの計算はあまり高い精度は出ないので、0.13≒0.14ということで、私の検討結果(ベクレル単位の数字を体重で割るとマイクロシーベルト単位の数字になる)と、高槻さんが書かれたこと(10,000ベクレルを経口摂取すると実効線量は0.13ミリシーベルト)は一致していると考えていいと思います。

 おわかりいただけましたでしょうか。

 あと、1mSv/年を越えない1日の被曝量は
1,000μSv/年÷365日/年≒2.74μSv
だと思います。高槻さんが書かれた式の意味が、残念ながら私には理解できません。すみません。

投稿: dai(本人) | 2011.05.10 05:54

ありがとうございますm(_ _)m

私が計算した
n×100÷2+n×100×(365-100)=1000μSV
n=0.039μSV

食べたものは100日体内に残ると言う前提で
最初の100日はn×100÷2
そして100日目以降はn×100×(365-100)
という風に計算しましたが間違いでしょうか?

本分で書かれている一食50ペクレルだとすると
100日間(とどまる)で50×3食×100日=15000ベクレルがそれ以降の日にち(265日)体に放射線を与えると考えました
最初の100日を2で割っているのは、0からスタートした場合の累積で考えたからです

その考え方はおかしいのでしょうか?

投稿: 高槻 | 2011.05.10 15:20

高槻様

 「半減期が100日」ということは、摂取した量が少しずつ体外に排出されたり核反応で減少したりして、100日後には半分が体内に残り、200日後には25%まで減少し、300日後には12.5%になり、、、ということを意味しています。したがってその計算ではうまくいきません。

 もっと単純に考えていいのです。
 年間で1,000マイクロシーベルトだったら、1日あたりは365で割って2.74マイクロシーベルト。
 一方130マイクロシーベルト摂取で10,000ベクレル被曝する計算だから、2.74マイクロシーベルトを130で割って10,000をかけて、211ベクレルが1日の上限になります。少し余裕を見て1食あたり50ベクレルですね。

 実際にはセシウム137以外の成分もありますし、外部被曝も加算されるので、1食50ベクレルを上限としてできるだけ少なく、くらいの考え方がいいかと思います。
 なお、体重70キログラムで計算しているので、これより軽い人は体重に比例して少なくなるようにする必要があります。

投稿: dai(本人) | 2011.05.10 15:51

たいへん良く分かりました
ありがとうございますm(_ _)m

投稿: 高槻 | 2011.05.10 16:35

放射線に関する記事を参考にさせていただいております。分かりやすい解説をありがとうございます。
ところで、この記事の中で、セシウムのベータ線だけを計算して、ガンマ線を考慮しない理由は何でしょうか。また、セシウム134と137の1ベクレルあたりの吸収線量は、7対3くらい差がある、と解説してるものがありますが、もし、そうだとすると、被曝量の試算にどう反映させればいいものでしょうか。

投稿: yamaoya | 2011.12.03 21:00

yamaoya様
 コメントありがとうございます。

 記事本文で検討したのは内部被曝量です。γ線は体を通過して体外に出ていく量が多いだろうと考え、β線(ほとんど全量が体内に吸収される)で計算しました(γ線の吸収率計算を回避した概算です)。

 セシウム134と137の吸収線量の比について、7:3という数字は初めて目にしたので、どこから来ている値かわかりません。
 ただ、原子力資料情報室のHP(記事本文参照)のCs134とCs137の項目を調べると、Cs137のγ線が0.662MeV(85.1%)と書かれているのに対して、Cs134では0.563MeV(8.4%)から1.365MeV(3.0%)他まで多数の放出があり(しかも合計が200%を越える=壊変過程で平均2カウント以上出す)、それぞれの期待エネルギー量を合計すると73:27になります。7:3という比はここから来た値かもしれませんね。
 念のため補足しますと、吸収線量(シーベルト単位)は吸収したエネルギーの量であり、γ線のカウント数ではないです。

 いずれにせよ、「体内に吸収した場合」「生活環境に長期間存在し続ける場合」など、設定条件によって計算方法が大きく変わってきますので、何を計算しようとしているのかをはっきりさせることが大切かと思います。

投稿: dai(本人) | 2011.12.04 10:27

早速の回答ありがとうございます。
大変よくわかりました。

投稿: yamaoya | 2011.12.04 21:46

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