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自主防衛に関する論考断片

 日本の安全保障についての議論が高まっているように思う。良いことだ。

 ただし、安全保障の議論を抽象論で語るべきではないとも考える。鳩山前首相の、この面で最大の失敗は安全保障を抽象論で語ったことにあると考えている。

 本稿は、国土・海上権益の防衛に関して、自衛隊にどこまでできるかを考えたものである。ただし、まとまった論考をまとめる余裕がないので、さしあたりの断片を書き連ねた。

■ 軍事行動において、制海・制空権の確保を前提に置くのはアメリカだけではないだろうか。インペリウムとして当然の戦略と思う。
 しかし「普通の国」は、防衛において制海・制空権の確保を前提になどしないだろう。相手に制海・制空権を取られさえしなければ、攻撃と比べて防衛ははるかに容易なはずである。

■ Wikipedia によれば、自衛隊の対艦ミサイルの射程距離は150~200kmあるという。つまり、石垣島・宮古島に対艦ミサイル車両を置けば、尖閣諸島周辺海域は射程に入る。もちろん、領海・領空内の艦船・攻撃機も同様。
 尖閣諸島に着上陸作戦を行おうとする軍があったとして、作戦に先立ち制海権を確保しようと考えたら、石垣・宮古を空襲する必要がある。その際、地対空ミサイルもすべて叩かなければ、両島周辺の制空権も取れない。日本外交が底抜けのバカでない限り、石垣・宮古への空襲は国際社会に大きく訴えるはずだ。
 また軍事的リアリティーから言っても、船は沈むが島は沈まない。かつての中曽根元首相の「不沈空母発言」を想起。
 洋上艦は衛星写真に写る(艦種の識別も可能だろう)ことも重要。艦隊の隠密行動は不可能。

■ 潜水艦は強化すべき分野だろうと思う。深海探査で培った技術と、電気自動車の開発で得た蓄電池技術を使えば、小型・高性能の潜水艦が開発できるはずだ。周辺海域の防衛目的であれば補給も容易なので、小型潜水艦を多数保有することが効果的ではないかと思う。
 原潜を持たない分、小型高性能の潜水艦が技術的カギになりそうな気がする。

■ アメリカから F35 を買うかどうかが話題になっている。
 同機が STOL(装備によっては VTOL?) であることも考慮に入れるべきかと思う。離島のヘリポートや広場を改造して、臨時の離発着に使えるかもしれない。そのような運用に意味があるかどうか、戦略的検討が必要ではないか。

■ そもそも、戦争は損得で行うものだ。
 孫崎享さんは、碁打ちは戦略を理解していると語っていた。プロの碁では、取るか取られるかの戦いを経て最後は半目勝負、などということも珍しくない。損をするなら戦う意味がない。
 無人島(たとえば尖閣諸島)に着上陸作戦を行う国があるとしたら、何の「得」を求めての作戦だろうか。普通に考えれば海洋権益が目的だろう。端的に、海底油田と漁業権、と想定してみよう。
 尖閣諸島への着上陸作戦を完全に阻止する力は、自衛隊単独では持たないだろうと思う。しかし、軍隊の着上陸にどれだけの意味があるのだろう?
 「韓国軍が駐留する竹島を韓国が実効支配している」「だれも駐留していない尖閣諸島を日本が実効支配している」という2つの「実効支配」に大きな差があるというなら、着上陸に意味があろう。しかしこの2つに大差がないのなら、それ自体の意味は大きくない。
 重要なのは、周辺海・空域が戦闘海・空域になることではないか。制海・制空権を取れなくとも、戦闘海・空域という状態を長期にわたって維持する能力を自衛隊が持つことに意味があると思う。戦闘海域では漁業も困難だろうし、海底油田の掘削もまず無理だろう。既存のリグすら危険にさらされる。
 戦闘艦・戦闘機に対する打撃は最終目的ではない。輸送艦・タンカー・リグ・漁船・輸送機の安全を与えない状態を作れれば、目的は達せられる。そして、繰り返しになるが、輸送艦・タンカーは衛星で位置を捕捉できる。リグはそもそも動かない。

■ 無人島に恒久施設を作るとした場合、輸送機による輸送では多数機が必要で、恰好の攻撃目標。もちろん輸送艦も、恰好の攻撃目標。

■ まともに外交ができれば、不当な戦闘状態を引き起こした相手国に、国際貿易上の損失を与えることも可能だろう。

■ 孫崎さんによれば、中国政府は軍を押さえきれておらず、海軍の暴走を心配しているという。もし仮に中国海軍が暴走した場合、日中双方が大損するということだ。
 それを防ぐために軍事力強化に依存するのはコストが高いし、軍拡競争に陥ればそれも両国にとっての損失になる。
 この点に関しては中国政府に協力するのが賢明だろう。

【付記 2011/04/01】
 中国が沖縄を射程に入れる新たな弾道ミサイルを開発した、との記事(JBPress)
 本稿で触れた対艦ミサイルも含め、沖縄の地上・港湾施設を遠方から攻撃できることになる。要注意情報。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5738
【付記終わり】


※ 八重山・宮古の人が不快に思うといけないので補足します。
 核兵器の抑止力については、相互確証破壊という論理の裏付けがあります。核兵器の撃ち合いになったら双方が全滅する。だからやらないだろう。
 この、「だからやらないだろう」が重要。上記論考も、「だから戦争にならないだろう」という意味で書いています。八重山や宮古は大好きな島々で、そこが空襲されることなど、想像したくもありません。あくまでも「だから、、、」という結論を導くための作業としての論考です。
 念のため。

 あ、あと、石垣・八重山という二つの固有名詞をごっちゃに使っていますが、きちんと使い分けているわけではなく、なんとなくごっちゃになってしまいました。

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コメント

メモ:日本領海からの射程圏外に停泊した輸送艦からヘリで荷揚げすることは可能

投稿: dai(本人) | 2011.03.10 12:01

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