« チェルノブイリほどの放射性物質は放出されない、との予測 | トップページ | ベクレルとシーベルトの換算 »

つくば市で採取された放射性物質の概要(KEK敷地内)

【2011/3/20 17:09 タイトル修正、「上空」は間違い。執筆時の勘違いです。申し訳ございません】
【2011/5/12 タイトルを再修正】

筑波の高エネ研が、敷地内の大気から検出された放射性物質の量を3月18日付で公表しています。
http://www.kek.jp/quake/radmonitor/GeMonitor2.html

 ここに出てくる核種の半減期と放出される放射線を、理科年表(2008年版)から拾い、一覧にまとめました。どれもβ線を出すようですね。
 また、計測時点からの核種ごとの減衰曲線を描いてみました。

(数値は四捨五入して3桁に丸めた)
・ヨウ素131  8.02日  β線
・ヨウ素133  20.8時間 β線
・セシウム134  2.06年 β線
・セシウム136  13.2 日(理科年表に出てなかったのでWikipediaより)
・セシウム137  30.1年 β線
・テルル129m  33.6日 β線
・テルル132   3.20日 β線
・テクネチウム99 21.1万年 β線

 グラフは、核種別の計測された放射能の減衰曲線です。
 短期的にはヨウ素とテルル、長期的にはセシウムに警戒ですね。元素ごとに、その場所へのとどまり方、体内に入るメカニズム、体内での挙動が異なるので、それぞれの注意点を医学的にチェックする必要がありますね。

○ 軸は、縦軸が放射能濃度(単位:Bq/m3、対数目盛)、横軸が測定時点からの日数です。元データはBq/cm3単位でしたが、見やすさを考えてBq/m3に変換しました。

※補足(2011/03/19 20:40)
 この数値自体が危険という意味ではありません。安全な水準でしょう。
 今後万一福島原発からこれまでにない大量の放射性物質が放出された場合に、この比率と同じような比率で同じような核種が放出されたとき、対策を立てる参考になるだろう、というような意味で掲載しています。

15日14:39~17:34採取分
01

15日17:48~16日08:48採取分
02

16日09:08~17:08採取分
03

■追記(2011/03/20 06:20)
 文科省のモニタリングデータページが下記にあります。
 上記「放射性物質」は、茨城県内で0.2~1.5μSv/hの「空間放射線量」が観測された時間帯、ということになりますね。放射線量はリアルタイムで観測可能なのに対して、放射性物質の定量分析には時間がかかるので、空間放射線量を参考にして放射性物質の飛来状況を推測する必要があると考えています。

■追記(2011/03/21 14:00)
 「安全な水準でしょう」と書きましたが、そうでもないようです。
 知人が教えてくれた、G.Friedlander et al."Nuclear and radiochemistry"3rd ed. p.240 によると、ヨウ素131の許容量は、一般環境では空気1mlあたり10のマイナス16乗キューリー(3.7×10-6ベクレル)が上限ということで、高エネ研の敷地はこの条件の約10倍です。なお、放射線管理区域の基準ではその100倍(3.7×10-6ベクレル)なので、これは満たしています。
 言ってみれば、高エネ研周辺の人たちは、放射線管理区域(放射線関係の仕事をしている人たちが普通の服装で歩いている実験室など)に約1日間滞在したような状況ということでしょう。一般市民にとって好ましいことではありません。

■追記(2011/03/21 15:15)
 高エネ研のホームページには、3 月16 日17:21—3 月17 日9:21 のデータも出ていますが、こちらは2桁低くなっているので、放射性物質を含む大気が移動したと考え、作図を省略しました。

 文科省トップページ: http://www.mext.go.jp/
 茨城県のデータ: http://mextrad.blob.core.windows.net/page/08_Ibaraki.html

■追記(2011/06/30 18:55)
 昨日の午後からこの記事へのアクセスが急増したので調べたら「テルル129m」での検索が来ている。自分でも検索したところ、かなり上位にいるようです。お求めの情報がなくてがっかりされたかたが多いのではないでしょうか。すみません。
 ところで、同じ検索で引っかかった「kuu-kuu ブログ」というページ(リンクは張りません)に、テルル129mの半減期が1600万年と書かれていて、ちょっとびっくりしました。なぜ? もしかして理科年表が間違い?
 そして少し調べたら、「海水から検出された放射性物質「テルル」について情報をまとめた」と書かれたページ(リンクは張りません)に、このブログページへのリンクとともに次のように書かれていました:

【引用】
半減期
テルル129m  33.6日
出典つくば市で採取された放射性物質の概要(KEK敷地内): 分散型エネルギー社会を目指して
崩壊すると、ヨウ素129に変化する(半減期:1,570万年)
【引用終わり】

 おそらくこのページを見て、テルル129mの半減期が1570万年(約1600万年)だと勘違いした人がいたのではないでしょうか。理科年表に出ているとおり、半減期:1,570万年はヨウ素129の話しです。
 気になったので、ご参考まで。

 ついでにもう一点。
 この記事の上の方で「・テルル129m  33.6日 β線」と整理しました。ただし実際には、(理科年表)テルル129mにはβ壊変と核異性体変位の両方の壊変形式があります。
 テルル129(m=準安定状態ではない、安定状態)の半減期が69.6分で、33.6日よりずっと短かったので、テルル129m⇒テルル129⇒ヨウ素129という壊変ルートと、テルル129m⇒ヨウ素129という壊変ルートの半減期の違いを無視したものです。

 核物理の知識が乏しいのでなんとも言えませんが、普通に考えると、安定状態より準安定状態の方が半減期が長いというのは不思議な話ですよね。
 同じ理科年表の「壊変系列図」の、「ウラン系列」のPa(プロトアクチニウム)のところなどを見ると、省略されている前提的知識があるように考えられます。気になる方は核物理の専門家の方に聞いてみて下さい。

|

« チェルノブイリほどの放射性物質は放出されない、との予測 | トップページ | ベクレルとシーベルトの換算 »

コメント

東電が蒸気放出を見送ったというニュース(20日夕)の中で、風向を考慮してと言っていたのもうなづけますね。格納容器内の蒸気を直接排気した場合、風下では管理区域の規制値すらオーバーする可能性が充分にあるでしょうから。

投稿: dai(本人) | 2011.03.21 15:39

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/35133/51161981

この記事へのトラックバック一覧です: つくば市で採取された放射性物質の概要(KEK敷地内):

« チェルノブイリほどの放射性物質は放出されない、との予測 | トップページ | ベクレルとシーベルトの換算 »