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避難を検討しているあなたへ

 東京のように離れた地域で一番恐ろしいのは、放射性物質を体内に取り込む内部被曝です。「空間線量が毎時○○マイクロシーベルトだから安全」という発言は、肝心のことがわかっていない人の発言ですから判断材料に使えません。
 重要なのは、どんな物質がどの程度の量飛来しているかであり、その参考値として空間放射線量(○○マイクロシーベルト)を読むわけです。私は専門家ではありませんから内部被曝リスクを状況に応じて推計することはできません。ただ、燃料棒(炉中であれ、使用済みであれ)が大規模に破壊され爆発的に飛散したとき、風下の地域は明らかに危険だと考えます。
 そして、危険な状況を事前に予測して避難することが望ましいと考えます。避難が空振りになっても後悔しない人は、どんどん避難していいと思います。
 しかも、輸送能力を考える必要があります。鉄道も道路も、輸送能力には限界があります。避難する人の流れはどうしても時間的に幅を持ったものになります。危険な状況に至ってもなお、避難しきれない人が大量に出る恐れがあります。
 この点でも、一定数の敏感な人が先に避難していれば、その分後から避難する人が救われるわけです。また、避難時の混乱を考えれば、子供や弱者は空いているうちに避難するのが望ましいに決まっています。
 「まだ安全だから避難する必要ない」という言葉は空疎です。危険になってからでは避難できないおそれがある。危険が予測されるから避難するのです。人によって危険の感じ方が違うおかげで、避難のタイミングがずれ、交通混雑が緩和されることも多少は期待できるでしょう。それゆえ、各自が自分の感性にしたがって、避難すべきと判断したタイミングで避難するのが望ましいと考えるのです。

 自分だけが避難することに罪悪感を感じないでください。あなたが先に避難することで、後から避難する人の席が一つ空くのです。

2011年3月20日10:00追記
 避難に関して私より消極的な解説を読みました。専門家による丁寧な解説なので、合わせてご参照いただければお役に立つと思います。
http://getnews.jp/archives/105218

2011年3月21日13:45追記
 避難のタイミングについて「赤信号」「黄信号」とわかりやすく整理された記事が出ました。
http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html

(専門家、に関する注釈を「続き」に書きました。ご興味のある方はお読みください)

 「専門家」を自称する人が入れ替わり立ち替わり出てきます。しかし、大規模な燃料棒の破壊でどんな種類の放射性物質がどの程度放出され、そのときの風向がどうなっており、それぞれの放射性物質が風に乗るとどのようなスピードで移動・拡散し、何キロメートル離れた地点で地上付近の濃度が高まり、それが体内にどのように吸収され、それによる体内被曝がどれだけ危険か、ということを専門的見地からきちんと説明できる人は、おそらくいないと思います。

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コメント

放射性物質には、強い放射線を出すが、すぐに壊れてしまうものと、放射線は弱いが、土壌や人体に結合しやすく長期間影響を与えるものとあります。

遠隔地において、問題があるのは後者です。
空間線量は、放射性物質の種類を特定しません。

>「空間線量が毎時○○マイクロシーベルトだから安全」という発言は、肝心のことがわかっていない人の発言

申し訳ないのですが、この意見は間違った認識です。

>燃料棒が大規模に破壊され爆発的に飛散したとき、風下の地域は明らかに危険だと考えます。

それは、危険です。
しかし、今、あえて主張することではありません。
今、何が本当に危険であるのか、必要であるのかを私たちは考えていかなければいけないと、感じています。

あなたさまの気分を害するのは、本意ではありません。お許し下さい。

投稿: Odvaha | 2011.03.20 09:18

放射線量と放射線料率とは、しっかり分けて考えるべきだと思います。レントゲンやCTスキャンは一回あたりの放射線量、いまモニタリングされているのは、時間当たりの放射線料率です。肝心なことがわかっていない、というのはそれを指摘したかったような気もします。

投稿: わたなべ | 2011.03.20 09:32

Odvaha 様
 真摯なご指摘ありがとうございます。


 まず、

>「空間線量が毎時○○マイクロシーベルトだから安全」という発言は、肝心のことがわかっていない人の発言」

については、ちょっと書き方がまずかったかな、とは自分も後で考えました。いまのところ訂正はしなくてもいいと判断していますが。

> しかし、今、あえて主張することではありません。

 このご指摘については見解を異にします。
 避難する必要が無視できないと執筆段階では判断しており、その場合の避難者の輸送量を少しでも前倒しする対策が、執筆段階で必要と判断しました。
 公的機関は、輸送能力が保障されない状況で避難勧告を出さないと予想されるため、各自が自分で判断することが重要と考えています。

 空間線量と飛来物質の相関については資料が乏しく、精度の高い推計は困難と思いますが、それでも危険の程度を判断する必要があります。
 このブログの2つ後の記事に、高エネ研のデータを元に参考資料を作ってみました。

 批判的見地からのご指摘や上記へのご反論がさらにあれば、ちょうだいいただけますと幸いです。

 ツイッターでは
@dai_dereg
です。

 ありがとうございました。

投稿: dai(本人) | 2011.03.20 09:38

わたなべ様

 コメントありがとうございます。

 空中放射線量だけから安全という結論を出すのは短絡的、という点が重要と考えています。ご指摘の点も含めて、です。
 たとえば先ほど見たテレビ番組でも「放射線量は距離の二乗に比例するので遠方では安全」と説明していました。

 幸い事態は最悪のシナリオから離れつつあるようで、危険な放射性物質の大量の飛散は避けられそうですね。電源が回復し配管を通した冷却が始まった時点で、短期的危機は脱した旨の記事を書く予定です。

投稿: dai(本人) | 2011.03.20 09:44

>「放射線量は距離の二乗に比例するので遠方では安全」

確かにそれで安全なのは、事故現場から出る直接の放射線に対してだけで、説明が足りないと感じます。
そういった情報のあり方も混乱する原因かもしれません。

福島原発の事故はレベル5ですが、チェルノブイリのような事故は構造上あり得ないと判断します。
また、原子炉がひどく損傷(燃料が周囲に吹き飛ぶ)などがない限り、重篤なタイプの放射能汚染は回避できます。
また、現状でその可能性は限りなく低い。

つくば市のデータ拝見しました。
ほとんどがヨウ素131。
相手が分かれば対策を打てますし、80日以内で決着がつけられます。
またその放射性物質の総量も、同時間の放射線量の推移と比較しても、危険ではないレベルと判断できます。

「同時間帯の放射線量(つくば市)」
http://www.aist.go.jp/taisaku/ja/measurement/all_results.html
時間当たり放射線量(修正)0.3~0.16μsv/h

微量放射線による害を訴える人もいますが、60年代の大気圏内核実験で世界中にばらまかれた放射能も、いまだに私たちの空の中にあります。
あまり潔癖になるのも、良い結果を生まないと感じます。

過度に放射能を警戒することは、現地の復興作業を遅らせてしまう点を危惧しました。

>「空間線量が毎時○○マイクロシーベルトだから安全」

いろいろ考え方は在りますが、
今はこの発表をそのまま受け止めても
良いのではないかと思うのです。

爆発する可能性は、ゼロではありません。
でも、最悪のケースなら何処にいても同じですし、西日本にも原発はありますし、地震も起きます。

完全に安全な場所は無いのだと感じます。
それならば、私は自分の出来る場所で自分の出来ることをしていくのが、最善ではないかと考えました。

意見が異なる部分は、避難するかしないかの点だけで、その部分は自由意志です。

丁寧なお返事、有り難うございました。
詳細なデータもとても参考になりました。

投稿: Odvaha | 2011.03.20 18:25

Odvaha様

 再度のコメント、大変ありがとうございます。また、私が提供しているデータがご参考になったこと、嬉しく存じます。

 ネット社会のすばらしいことは、多様な意見に容易にアクセスできることだと考えています。以前は、極端な意見に多数が引きずられるのではないかという危惧もありましたが、今回の震災を見る限り、様々な意見の中から妥当なところに収斂しているのではないかと感じています。もちろん、一つの中心的意見に収斂するという意味ではなく、個人個人のばらつきがありつつも、極端には知る人はあまりいないという意味です。

 原子力という巨大技術体系の全体(被害も含めて)を理解している人間はいないと思います。それぞれ自分の知識を生かし、謙虚さは忘れずに(この部分でときどき友人から批判されますが)、社会をよくするよう持ち分を果たしていきたいと考えています。

投稿: dai(本人) | 2011.03.20 19:42

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