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法人税率を下げる必要はない

 法人(実効)税率を下げることについて、議論が続いている。日経新聞では、下げるべしという論調が優勢だが、三菱UFJの方(名前忘れました)など、下げる必要がないという意見もある。
 私としては、「法人実効税率」というおおざっぱな(乱暴な)概念で括るべきでないと考えるし、また法人税率についても課税ベースについての議論が重要だと考える。その上で、法人税率は下げる必要はないというのが私の結論だ。経済の専門家ではないが、ちっぽけな会社を経営した経験などもふまえて論考する。

※ ただし、法人税率を下げる必要があるとすれば、、、という条件について次に書く予定だ。

 法人実効税率の議論は、次のように切り分ける必要がある。
(a) 社会保障費(等の義務的支出)と、法人税率(事業税率、所得課税)の切り分け
(b) 法人税の課税ベースの切り分け

 社会保障費、つまり厚生年金や健康保険の雇用者負担(会社負担)分については、最終的にはなくして、国民年金・国民健康保険に一本化するのがスジだと考える。自営業者、農業者、零細企業労働者(年金・保健が滞納されて労働者が不利益を被ることもある)、公務員など、すべてを一本化し、負担は被保険者が支払いつつ、税金を投入する(消費税率を上げる必要があるだろう)という考え方である。
 この意味において、私は「法人実効税率を下げるべきだ」という意見を持っていることになる。

 次に法人税の課税ベースだが、次のように切り分けられるだろう(専門家ではないので、見落としがあるかもしれない)。
(1) 取締役報酬
(2) 出資配当
(3) 内部留保
(3-1) 研究開発投資
(3-2) 生産投資
(3-3) M&A「のようなやつ」
(3-4) 有利子負債の削減
(3-5) 手許現金積み増し

 さて、それぞれに分解して検討しよう。

(1) 取締役報酬
 これについては、二重課税問題として議論すべきだと思う。つまり、法人事業税を払った後の利益(税引き後利益)の中から取締役報酬を支払い、そして取締役個人は受け取った(税引き後の)報酬からあらためて個人所得税を課税されるという問題。
 二重課税問題なので、解決の方向性も二通り。
 第一案は法人側で課税しない=取締役報酬の損金算入を認めること。「カルロス=ゴーンのように優秀な」経営者を海外から招く上で有利に作用するだろう。
 第二に、日本国内の法人の経営者はできるだけ日本人の方がいい、と考えるなら、個人所得税において取締役報酬を所得控除すればよい。
 足して二で割る方法や、部分的導入も可能。
 いずれにせよ、法人税率の問題にすべきではない。

(2) 出資配当
 これも二重課税問題だと思う。税引き後に配当を払って、受け取った側がもう一度所得税を払う。
 これの解決も(1)と同様二通りの方向性があって、国民の国内企業への投資を促進したければ配当所得を所得控除し、海外からの投資を呼びこみたければ法人側で損金算入する(課税しない)。

 なお、(1)・(2)について「部分導入も可能」と書いたが、逆に、これらを全面導入導入するなら法人税率は上げた方がいいのではないかという気がする。

(3-1) 研究開発投資
 これは今でも、償却期間の短縮や特別償却で対応している。研究開発を促進したければ、さらに強化すればよい。

(3-2) 生産投資
 これも(3-1)と同様の政策対象になっていると思うが、あまり優遇するのは考えもの。その理由は(3-4)(3-5)のところで説明する。

(3-3) M&A「のようなやつ」
 これについては、議論するだけの知的背景を持たないので、まあ、パス。
 多少の優遇があっていいのかもしれないが、あまり感心しない気もする。

(3-4) 有利子負債の削減
(3-5) 手許現金積み増し
 ということで、「法人税率を下げるべき」という主張のターゲットは、ここにあると私は見ている。
 資本主義の企業モデルにおいて企業(金融業を除く)が行うべきことは、出資や融資で資金(使用資本)を調達し、生産活動に使用して、使用資本利率を上回る価値を生み出して、金利を支払った上で報酬を受け取る(そして報酬から課税される)。
 収益を有利子負債の削減に回すということは、投資家や銀行に代わって自分で自分にゼロ金利で金を貸すに等しい。しかし、金を貸すのは金融業の役割であって、起業家の仕事ではない。そしてゼロ金利で貸すということは、貸し先(自分自身)が価値を生み出す能力がないことを意味している。
 要するに「法人税率を下げてくれ」と主張し、それで生じたキャッシュを有利子負債削減や手許現金積増しに回す経営者は、付加価値を生み出す能力がない無能な経営者であり、デフレの元凶だ、ということになる。

 簡単にまとめる。
 法人税率を下げることは、無能な経営者を野放しにし、デフレを促進し、日本経済を悪化させる。

 専門家ではないので考え落としがあるかもしれないが、現時点の私の結論である。
 ただし、もはや経済成長はないと考えると、別の評価が出てくる。これについては別稿で。

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