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温暖化ガス排出量25%削減ですか?!(福田・麻生・鳩山首相の目標が指し示す道筋)

 地球温暖化防止に関して、鳩山新首相が2020年に1990年比25%削減という目標数値(国際的量的取引含む)を明言し、話題になっている。
 真水でこの目標を達成するのは極めて難しいと私は考えるが、実は問題はそこにはない。目標値は時間断面で語られるが、実際には時間軸に沿って社会は変化しており、縦軸から横軸に視点を切り替えれば、福田元首相(2050年に90年比60%以上削減)、麻生前首相(2020年に2005年比15%=90年比8%削減)と、上記鳩山新首相の主張に大きな隔たりがないことがわかる。

 まず、私の原則的主張を先に書いておこう。
 40年程度の期間で温室効果ガス排出量を数分の1に削減するというドラスティックな変化を目標とする場合、目標値の設定は、「○○年に△△%削減」という時間断面の目標値ではなく、「△△%削減を○○年に達成」という時間軸に沿った目標の方が合理的だというのが私の考えである。長期目標は2050年に60%あるいは80%削減であり、中間年に関しては「○○年の削減目標が達成できなかった」ではなく「△△%削減の達成年次が、目標年より□年遅れた」という表現でなくてはならない。
 なぜこのように考える必要があるか。今日の政策課題に即して記述する。

 以下、日本の温室効果ガス排出量の時間変化(2005~2050年)を、1990年比の増減(%)を単位に、ごく単純な数学モデルで表現してみる。
 出発点は2005年とし、この年の排出量は1990年比+7%だとする。そしてこの年の前後はおおむね排出量が横ばいと考える。
 長期的目標年は2050年とし、その年の排出量を、最初は1990年比-60%に設定し、これを福田元首相の設定した目標値と考える。その際、目標年次以降の排出量は横ばいで構わないものとする。
 また、環境科学者や環境NGOが主張するように、日本のように一人あたり排出量の多い国は、2050年に1990年比-80%が必要だとした場合の分析も加える。その場合も、目標年次以降の排出量は横ばいで構わないものとする。
 そして、スタートとゴール時間変化を横ばいとしたので、「ごく単純な数学モデル」としてサインカーブを採用した。

 その結果を、以下数値で示す。グラフは掲載しないが、ピークからボトムに向う単純なサインカーブ(コサインといった方がわかりやすいでしょうか?)である。
※ この数表は真水(国内正味削減量)としておこう

 まずは1990年比-60%の数表。

年次 1990年比増減(%)
2005 7
2006 6.92
2007 6.67
2008 6.27
2009 5.7
2010 4.98
2011 4.1
2012 3.08
2013 1.91
2014 0.6
2015 -0.84
2016 -2.4
2017 -4.08
2018 -5.88
2019 -7.77
2020 -9.75
2021 -11.81
2022 -13.95
2023 -16.15
2024 -18.4
2025 -20.68
2026 -23
2027 -25.33
2028 -27.67
2029 -30
2030 -32.32
2031 -34.6
2032 -36.85
2033 -39.05
2034 -41.19
2035 -43.25
2036 -45.23
2037 -47.12
2038 -48.92
2039 -50.6
2040 -52.16
2041 -53.6
2042 -54.91
2043 -56.08
2044 -57.1
2045 -57.98
2046 -58.7
2047 -59.27
2048 -59.67
2049 -59.92
2050 -60

 まず注目していただきたいのは、2019年と2020年の値である。2019年は90年比-7.77%、2020は-9.75%であり、これは2005年比-15%という麻生首相の2020年目標を1年前倒し達成した値である。
 次に、鳩山新首相の、1995年比-25%がどの辺にくるかを見ると、2027年であることがわかる。
 つまり、単純な近似で恐縮ではあるが、この数表は福田元首相と、麻生前首相の目標を達成し、かつ、鳩山新首相の目標を7年遅れで達成するシナリオ、と言うことができる。

 しかも、麻生前首相の目標値は真水(国内削減量)だったのに対して、鳩山新首相の目標値は国際的量的取引を含んだ値である。したがって、7年分の時間遅れを投資協力(中国・ロシア等々の国々に対して)で埋め合わせるという「メカニズム」を国際交渉で獲得できれば、2020年鳩山目標をもこの数表に乗ったことになる。

 以上のことから、私の主張、すなわち、時間断面ではなく時間軸に沿った目標設定が重要だという意味をご理解いただけたのではないかと思う。

 その上で、これはまだ分析が難しい、2050年に1990年比-80%の数表を掲載する。結構たいへんな数字なので、評価はまた日をあらためて考えたいと思う。

年次 1990年比増減(%)
2005 7
2006 6.89
2007 6.58
2008 6.05
2009 5.31
2010 4.38
2011 3.24
2012 1.91
2013 0.39
2014 -1.31
2015 -3.18
2016 -5.21
2017 -7.39
2018 -9.72
2019 -12.18
2020 -14.75
2021 -17.43
2022 -20.2
2023 -23.06
2024 -25.98
2025 -28.95
2026 -31.95
2027 -34.98
2028 -38.02
2029 -41.05
2030 -44.05
2031 -47.02
2032 -49.94
2033 -52.8
2034 -55.57
2035 -58.25
2036 -60.82
2037 -63.28
2038 -65.61
2039 -67.79
2040 -69.82
2041 -71.69
2042 -73.39
2043 -74.91
2044 -76.24
2045 -77.38
2046 -78.31
2047 -79.05
2048 -79.58
2049 -79.89
2050 -80

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コメント

 「△△%削減を○○年に達成」という時間軸に沿った目標の方が合理的」であるが、残念ながら民主党には理解できる議員がいない。
守銭奴・福田衣里子、元キャバクラ嬢・太田和美、元風俗ライター・田中美絵子などを始めとする大量の小沢ガールズには、理解不可能と思われる。

投稿: 在日民主党 | 2009.09.24 05:43

 コメントありがとうございます。

 福田さんは「守銭奴」ですか、、、

 彼女に関しては、選挙演説がテレビ放映されているのを見ました。「私は鉢巻きを締めません。たすきもかけません。日焼け止めも塗り忘れました」というもの。
 街頭演説で、こんなふうに心に余裕を持っている方には期待したいと考えています。

 実際のところどういう方なのか、何も情報を持っていないので、たんなる印象ですが。

投稿: dai | 2009.09.24 07:38

人間の経済活動によるものを「数十年間、同じ割合で減少させる」ためには具体的なプロセス計画が必須ですが、それを提示出来る機関が無い事が、議論の混乱の一因となっています。
人間の体重に例えれば、30年かけて体重を80kgから32kgにする事が健康面などから見て現実的か?というのに似ていますね。

投稿: dawntext | 2009.09.26 14:13

dawntext 様
 コメントありがとうございます。

 90年比60%あるいは80%削減した社会のエネルギー消費構造やそこで用いられる技術を描くことは可能です。たとえば発電について、電力消費量を半分に減らす(効率化や人口減少などにより)ことができれば、その全量を再生可能エネルギー(大型水力を含む)でまかなうことができると考えています。ただし時間軸について、何年でどれだけ達成するかというスケジュール感について議論すべき点はあります。
 私がこの記事を書いたのは、「達成できるけれど数年遅れるかもしれない」という前提で考えたときに、遅れた場合のペナルティーが過大にならないように上手に国際交渉する外交術が必要だと考えたからです。

 dawntext さんの健康に関する比喩は、読む人によって異なる含意を連想するでしょうから、あまり適切ではないと思いました。
 気候問題を重要視する立場(私を含む)からすれば、健康=健全な生態系を連想するので「体重を80kgから32kgにダイエットしないと大病を煩うことになるとしたらどうするか」という比喩に思えるので、「なんとしてもダイエットしなきゃまずいだろう」という話になります。
 一方、現在の(産業革命後期から続いている)経済構造を変えたくない人にとっては、健康=今の経済構造の維持を連想するので「そんなダイエットは無理」という話になるでしょう。

 dawntext さんはどちらの意味でこの比喩を出されたのでしょうか?

投稿: dai | 2009.09.26 17:13

応答ありがとうございます。

お尋ねの比喩の意味につきましては、鳩山・福田・麻生氏のプランが同等であるという主張に対して疑問を抱いていますので、「急なダイエットをするなら、従来以上に具体化を急ぐべきだが、本当に急いで取り組んでいるのか?」となります。

疑問は、以下の3点です。
1. 2009年が残り少ない現時点で、2005年を起点とするのは何故でしょうか?
2. 設備投資の考え方では、効果を定率で考える事が多いと思うのですが、コサインカーブで計算された理由は何でしょうか?
3. コサインカーブで計算されているので、対前年度削減率は2020年頃から大幅にあげる必要がありますが、リソース投入の実現性に疑問があります。

上記3.では大雑把には、2020年の前後それぞれ7年間(2013-2020、2020-2027)を互いに比較すると、2020年以後はほぼ2倍の削減率が必要です。
つまり福田・麻生プランが達成できるなら、その後もっと頑張れば鳩山プランも可能と言うことですね。
これを以て、プランが同等というのは疑問ですが、そこは未来技術に期待することにして話を進めます。

この場合の前提は、少なくとも
1) 前年度を上回る効果の技術開発が全分野について数十年継続する。
2) 研究室レベルで開発された技術・機器を毎年、全システムに反映させる。
当然25年償却などは認められない。
または25年分の技術改善を1年で達成する方策を考える。(<---まあこれは考慮不要でしょう)

もちろん大変だからやらない、ではなく、必要なレベルまでやるべきであり、実現のためには技術開発への大規模な投資(独立行政法人は無駄、との見解とは相反します)、税制根本見直し(現在は設備を数十年使う前提)などを早急に具体化する必要があるのは、各プラン共通の課題です。
福田・麻生プランは、そういった実現性も含めた数値だと理解していましたので、それらの数倍の努力が必要な鳩山プランについては、より具体化の作業を急ぐ必要があるでしょう。

投稿: dawntext | 2009.10.03 20:02

dawntextさん

 生産的な反論、ありがとうございます。こういう意味のある議論は楽しいですね。

> 1. 2009年が残り少ない現時点で、2005年を起点とするのは何故でしょうか?

 私が、ではなく、国際交渉という性質上、やむを得ないと思っています(私もなるべく直近の年次をもとにしたいのですが)。
 エネルギー統計の確報値が出るのは、1年ちょっとたってからです。2005年度エネルギー消費量をもとにしたCO2排出量の確報値が出たのは、2006年夏だったと思います。
 また、年度について、小麦中心の欧州では10月~9月だったりといったこともあり、確報値ベースで交渉に使える数字がそろうまでにおおむね2年くらいかかる感じ(私は実務者でないので、あくまでも出てきた数字とその時点の時間差から感じたことを書いています)。
 その上で、その数字で国内合意に時間をかけてから国際交渉に臨むわけです。
 麻生前首相が2005年比15%削減を言い出したのは私の記憶では2008年秋なので、首相が国際交渉に出す時間軸として妥当なところだと思います。

> 2. 設備投資の考え方では、効果を定率で考える事が多いと思うのですが、コサインカーブで計算された理由は何でしょうか?

 理由はおもに2つです。
(1) 普通は減衰曲線を使うと思うのだけれど、それだと2050年以降も、永遠にエネルギー消費を減らし続ける形になります。それはちょっと寂しい。主発点(2005年)とゴール(2050年)を横ばい(時間微分係数=0)にして滑らかな曲線を書くのに適した曲線として、コサインを選びました。

(2) 昨今流行の「加速度的削減」ということに、一定の意味があると思っています。加速度的=二次関数ですから、出発点で二次関数に近似できるコサインは合理的と思いました。
 別の言い方をすると、dawntextさんが(間接的に)指摘されたとおり、2005年から2009年まで、ほとんど無策に過ぎてしまっていることです。出発点付近では、減衰曲線の方が早く低下し、コサインはしばらくほぼ横ばいで推移します。

> 3. コサインカーブで計算されているので、対前年度削減率は2020年頃から大幅にあげる必要がありますが、リソース投入の実現性に疑問があります。

 福田・麻生・鳩山の3首相のうちで、最初に大胆な削減ビジョンを打ち出したのは最初の福田元首相であり、それは2050年60%削減(90年比)だったと思います(数字の詳細は今覚えていませんが)。
 私は環境NGOの人間なので、本当は80%削減すべきというべき論を語る立場ですが、ここではとりあえず60%でもよしとしましょう。

dawntext さんは「福田・麻生プランは、そういった実現性も含めた数値だと理解していました」というお立場ですよね。でしたら、どういう形でも結構ですので、2050年60%削減に円滑につながるグラフをお示しください。「対前年度削減率は2020年頃から大幅にあげる必要がありますが」とお書きですが、福田ビジョン(鳩山でも時間がずれるだけ)を達成するためには、どこかで「対前年度削減率」を「大幅にあげる必要が」あることがおわかりいただけると思います。

(総括)
 ご指摘に対して批判的に主張を返しましたが、これは本質的に重要な(と私が考える)議論の一局面として書いたものです。私の個人ブログに、レベルの高いコメントをいただいてありがたく思っています。前向きの議論、ですよね(再度コメントバックいただけると、本当にありがたいです)。

投稿: dai | 2009.10.03 21:32

訂正:
「エネルギー統計の確報値が出るのは、1年ちょっとたってからです。2005年度エネルギー消費量をもとにしたCO2排出量の確報値が出たのは、2006年夏だったと思います。」

 2005年度エネルギー消費量確報値が出たのは2007年夏頃ですね。

投稿: dai | 2009.10.03 21:35

daiさん

いえいえ、批判とは捉えていません。
また、この種の議論は真摯に考えるほど、一見対立しているように見えるものですが、互いに気づき合うという目的からすれば、批判などは瑣末な問題です。

> 1. 2009年が残り少ない現時点で、2005年を起点とするのは何故でしょうか?
> 2. 設備投資の考え方では、効果を定率で考える事が多いと思うのですが、コサインカーブで計算された理由は何でしょうか?

以上2点については、仰られる趣旨を理解しました。
納得している訳ではありませんが、整合性について考えをまとめるのに少し時間を使いたいと思います。
ただ1点だけ、「加速度的削減」に賭けるのは一般に危険だと考えていますし、為政者が楽観を戦略の基本にすべきではないと思っています。
楽観視していいなら、そもそも「地球温暖化は大した影響無いんじゃないの?」という意見との議論に後退しかねませんから。
以上の理由等により、以下の計算では定率で実現することを想定しています。

> 2050年60%削減に円滑につながるグラフをお示しください。

以下の計算に出てくる排出量(単位:百万トン)は、
「JCCCA Web::全国地球温暖化防止活動推進センターWebサイト」の
www.jccca.org-images-stories-zuhyou-zuhyo2009_04_03s.jpg
から、私が推定したものです。

2009年の排出量を:1,330とすると、各プランでの対前年度削減率は
鳩山氏:1990年(1,144)の25%減(858)を、2020年達成(期間11年)---> 4.36%
福田氏:1990年(1,144)の60%減(458)を、2050年達成(期間41年)---> 2.65%
麻生氏:2005年(1,288)の25%減(1,094.8)を、2020年達成(期間11年)---> 2.00%
となりますので、より大きい目標だと考えています。

以上の「加速度的削減」の実現性予想が、daiさんと私の見解の相違(各プランが同等か)につながっている、という印象を持っていますが、他にも課題は多く、中でも全員がやる気になった場合でも残るものが気掛かりです。
それは前回のコメントの、以下部分です。

> 2) 研究室レベルで開発された技術・機器を毎年、全システムに反映させる。
> 当然25年償却などは認められない。

現在は、建築物・機器を数十年以上使い、根本的な改善は建て替え・リースアップ時まで待つ、というものが多いですね。
最新の改善策をすぐ反映させられるシステムの研究が、プランの成否を決めると考えています。
そのためには大規模投資(技術、教育、税制を含む制度設計)が必要であり、資金もさることながら、早く取り組む事が必須です。
(現政権を見る限り、公約全体の実現も危ぶまれるどころか実施予定だったものすら止めたっ切り進展なしの状況で、とても温暖化対策に本気で取り組んでいるとは思えない状況ですが。)

投稿: dawntext | 2009.10.05 23:24

dawntext さん

 出張続きで、返信遅れます。すみません。

投稿: dai | 2009.10.07 21:50

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