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FITにともなう国民負担-木ではなく森を見よう

 自然エネルギー発電の売電価格(配電事業者・消費者側から見れば買い取り価格)に関して、ドイツ型FIT(フィードインタリフ)のような長期固定買取か各制度を導入すべきだと主張してきた。そして最近、政府の方針や民主党マニフェストでも取り上げられるようになった。
 これに対して「国民負担」という観点からの議論が提起されているので、検討を加えておきたい。

 3月7日の中日新聞(Web版)に「太陽光発電普及に暗雲 一般料金転嫁、反発の声」と題して、以下のような記事が掲載された。
中日新聞記事「太陽光発電普及に暗雲 一般料金転嫁、反発の声」

 記事には「購入に必要な費用を一般の電気料金に転嫁する見通しで、発電設備を持たない利用者から負担増への反発がでてきた」と書かれている。この点については、以前、気候ネットワークの関係者からも「資金を持たない人が損をする可能性がある」と指摘されたことがある。

 「負担」について考えよう。

 気候変動問題において、まず第一に考えるべきことは、気候変動で大きな悪影響を受けるのはどういう人か、という点である。
 水没する恐れのある太平洋諸島や、洪水悪化が心配されるバングラデシュにおいて、太陽光発電を設置する資力を持った人は何%くらいいるだろうか? 中日新聞の言う「発電設備を持たない」国民の比率は、日本よりはるかに大きいはずだ。
 国際社会の中で日本が何をするかが問われている、ということをまず押さえておきたい。

 第二に、政策はパッケージで考えるべきことを指摘したい。
 気候変動対策のような大きな政策課題に対しては、多数の個別政策をパッケージとして適用することが求められる。そして、個別政策が万人に対して同じように影響することはあり得ないので、個々の個別政策を取り上げて議論すれば、必ず得をするグループと損をするグループが出てくる。
 もし、個々の政策一つひとつについて損をするグループが反論し、それを理由に政策を取り下げてしまったら、結局何もしないことになってしまう。
 政策の影響を評価する際には、パッケージ全体を見なければならない。

 第三に、「負担」そのものも全体で見なければならない。
 1997年に京都議定書が締結された後、日本の電力会社は石炭火力発電所をせっせと新設しており、この部分に関してCO2排出量を増加させている。その結果、京都議定書を守るために、より多くの排出枠を海外から買わなければならなくなっている。
 また、そもそも電力会社が石炭火力を選択する理由は、石油・天然ガスと比べて石炭が安価だからであり、安価である理由の一つは税金が安いからである。
 つまり、電力会社が石炭火力発電所を選択することにより
(1)電気料金は下がる
(2)政府が海外からCO2排出枠を買う分だけ税金が上がる(国のサービスが減る)
(3)エネルギー税収が減る分だけ税金が上がる(国のサービスが減る)
ということが考えられる。電気料金が下がったと言って喜んでいたら、気付かないうちに税金が上っているかもしれず、全体の得失を考える必要がある。

 第四に、太陽光発電(自然エネルギー発電)には誰でも参加することが可能であり、中日新聞が書いた「発電設備を持たない利用者」という分け方が必ずしも適切でないことも考えておきたい。
 日本で太陽光発電普及運動を担ってきた多くのグループは、市民共同発電所を建設したり推奨したり支援してきている。自宅に設置できない人は市民共同発電所に出資すればよいので、誰でも参加することが可能だ。
 もちろん出資するだけの資産を持たない人(私自身もこのグループに属するわけだが)にとって負担増になることは避けられない。しかし、そもそも所得再配分や社会的セーフティーネット機能は、個別目的の政策に求めるべきではなく別途議論すべきだと私は考える。確かに所得再分配機能を随伴した政策はスマートだが、だからと言って逆進性を持つ政策をすべて否定してしまうと、政策の自由度が大きく制約され、政府の機能を損なうことになるだろう。

 なお、第四の論点に関して付言すると、「出資者を募って第三者の屋根に太陽光発電所を建設し全量を売電する」事業を促進することで、誰もが太陽光発電事業に参加できるようにすることがのぞましい。これにより国民の個人資産が温暖化対策に効果的に投入されるだろう。
 現在の日本の制度では簡単ではないが、ドイツではそのような事業が一般的だと聞いた覚えがある。

 以上、時間がないのであまり深く論考せずにノートとして書いた。ご批判を頂戴できれば幸いです。

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コメント

dai様 始めまして、GEIN事務局のヤマグチガクと申します。トラックバックさせていただきましたので、ご挨拶も兼ねて、コメント致します。先日の経産省の制度では、市民型の共同発電所は電力買取の範囲には含まれないようですので、「誰でも参加することは」可能ではないようです。これが買い取りの範囲に含まれると、さらにいろいろな参入者が出てきて、市場が活性化する気がするのですが、、、、「やるぞ!日本!Yes100円」キャンペーンは、まずは100円程度の負担なら受け入れる覚悟があるよ!という「森を見る」人々の声を集めるキャンペーンです。是非、daiさんも、宣言及び、宣伝頂けるとありがたいです。何卒、よろしくお願い致します。

投稿: gein事務局 | 2009.03.10 12:27

FITではあるけど、ドイツ型とは異なってそもそも自然エネルギーの普及を止めてしまったRPSの枠組みをそのままにして全量評価にしないで成果評価の出来ていない、それも10年という短期間だけの目先の支援でごまかそうと言うのが政府の出した方針。これを持て囃すNGO.NPO、マスコミのダメさ加減に呆れ果てています。

如何に自然エネルギーを買い叩きながら既得権益を守ろうとしているのかをきちんと見てくべきでしょう。10年たったらあらあらと言うのは目に見えていますねぇ。

それに地域経済にとっては何のメリットもないですなぁ。

やっぱ「設置年度毎発電原価補償支援を最低15年から20年間、地域限定期間限定通貨(商品券やクーポン券)で地方独自に支給する」そして、「その財源措置は(まったく今は経産省の下僕みたいになっているけどまあ、ここが)最終的にはCO2削減量を取りまとめる責任のある環境省を通して資金配分をする」と言う所でしょう。
coldsweats02think

投稿: お日様だいすき | 2009.03.11 17:25

付言すると、きちんとした発電原価補償がなされるなら、貧乏人もローンを組んで自分の発電所を作れるし、このこの金利水準が若干でもプラスなら10円程度は吸収できるだろう。

因みに、日本で導入する場合はメガソーラーなんて阿呆なものを支援対象からは外すべきだと思う。支援対象は当面10Kw以下のシステムで低圧電灯契約のもの。それで大きなシステムの場合は参加者一人あたり2Kwまでの協同組合などに限るべきだと思いますね。

投稿: お日様だいすき | 2009.03.11 17:32

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分散型エネルギー社会を目指して というBlogを書いていらっしゃるdaiさんが、 [続きを読む]

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