国際連帯税はダンピングファクターとなるか
ATTAC JAPAN という団体ATTAC JAPAN ホームページで活動している友人と議論して気付いたことがある。国際連帯税、あるいはトービン税と呼ばれる税制(上記HP参照)について議論したのだが、この税制が持つ短期資本移動抑制効果はダンピングファクターとして理解できるのではないだろうか。
ダンピングファクターの意味をご存じない方のために、まず簡単に説明しよう(ご存じの方は★印まで飛んでください)。
手を離したら元に戻るドアを想起していただきたい。
ドアは、事情がない限り閉まっている状態に維持することを目指す。したがって、誰かがドアを開けて通行し、手を離したら閉まっている状態に戻すことが制御の目的となる。
一番簡単なのが、スプリングを蝶番に取り付ける方法。昔のトイレに良くあったドアであり、西部劇のバーの入口でもおなじみのタイプ。
閉まっている状態から両方向に開くことができ、どちらに開いても、最終的には閉まった状態に戻る。このようなスプリングの力は復元力と呼ばれている。
ただしこのタイプの、単純にスプリングを入れただけのドアだと、閉まる前に何度もバタバタ行ったり来たりを繰り返す。
このバタバタを防ぐためには、スプリングと並行して摩擦力を持たせる必要がある。手を離すと閉まるドアの大部分は、現在このようなしくみになっていて、例えばシリンダー内の油が小さな穴を通過する摩擦(粘性)抵抗を使って、ゆっくり閉まるようにする。
この機能がダンピングである。
あるべき状態から外れたとき、あるべき状態に引き戻す復元力がスプリングの役割だが、それだけだとあるべき状態から行き過ぎが生じ、摩擦がゼロだと永遠に振動し続けることになる。スプリングは変化の方向を決め、変化させるための力も生み出すが、変化を止める機能を持たないからである。
これを防ぐためには摩擦、すなわち変化を止める作用が必要となる。
復元力とダンピング。その両者のバランスが最適な状態にあり、最も短時間であるべき状態に達する状態を「クリティカルダンピング」と呼び、これに対して変化させる力が強すぎて振動してしまう(摩擦がゼロでなければいずれ収束するが)を「アンダーダンピング」、逆に制動が効きすぎてなかなかあるべき状態に達しないことを「オーバーダンピング」とよぶ。
(★ここまでジャンプ)
今回のブログのテーマは、先物市場などによる価格形成機能である。
財の適正価格を決定する機能について、市場メカニズムを信頼する立場と、信頼しない立場がある。そして昨今の市場における極端に大きな変動を見て、市場メカニズムそのものに対する疑念が大きくなっているのではないかと思う。その疑念はもっともだ。
しかし、市場メカニズムを信じるか信じないか、といった単純な二元論は危険だろう、と主張するのが本稿の目的である。あてはめる場面とメカニズムの設計が適切であれば市場は適切な価格決定を行なうと私は考えている。
ところで、市場の価格決定機能というのは、簡単に言えば、適正価格より実勢価格が高すぎると考える人が多ければ売りが買いを上回ることで実勢価格が低下する、というメカニズムである。
このメカニズムは、上で説明した制御理論で言えばズレを補正する復元力(スプリングの役割)に相当する。
近年、情報技術の発達や金余りなどにより、適正水準からちょっとでもズレたらそのズレを瞬時に利用して短期で利鞘を稼ぐことが可能になっている。つまりスプリングがどんどん強くなっているわけだ。
その一方で、取引により価格を動かすこと自体に対するブレーキ要因、すなわちダンピングの力は強くなっていない。むしろ弱まっていると言っていいかもしれない。
つまり、復元力が以前より強くなっているにもかかわらず、ダンピング作用が強まらないためにアンダーダンピング状態となり、不必要に価格が振動してしまいがちなのが現在の市場の姿なのではないだろうか。市場の持つ価格決定機能、復元力に相当する機能そのものが間違っているのではなく、それにふさわしいダンピング作用がないために混乱しているのではないか。これが私の考えである。
そこで国際連帯税だ。
航空運賃ヘの課税などと言った手法もあるようだが、本論で取り上げるのは国際間の資本取引、早く言えば為替取引に対してごくごく低い(たとえば0.01%)の税を課すというもの。
実体取引(貿易)を行なっている事業者が為替取引する(例えばアメリカに輸出する事業者はドルを円に替える)場合、0.01%といったオーダーの税率は為替リスクヘッジのコストよりもずっと小さいだろう。
一方、一日に数回、場合によっては数十回売買を繰り返すマネートレーダーにとっては、相当な重税になる。
誤解しないでいただきたいのだが、実需をともなわないマネートレードを否定しているわけではない。市場の重要なプレーヤーだと考えている。ただし、彼らにはダンピングファクターを課さないと、振動が大きくなりすぎるということを主張するものである。
市場の価格決定機能を適切に機能させるためにこそ、ダンピングファクターとして国際連帯税を導入する価値があると思うのだが、いかがだろうか。
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コメント
そういえば、SFのジャンプドアシリーズの設定の中で、政府自らが設立運営しているサボタージュ局というのがあって、その設立された理由は、あまりに効率が向上され、スピードアップされてしまった弊害を抑えるためだ、ということでした。
投稿: SGW | 2008.11.15 06:35