« 自然エネルギー発電の基準価格[2008/08] | トップページ | 千羽パネルプロジェクト、スタート! »

アメリカ帝国の終焉に覚悟のある首相候補は?

 9月7日(日)、テレビで自民党総裁選候補(予定)者(代理含む)を並べた討論番組を見た。その中で外交姿勢に関して、7人全員が「日米同盟重視」で共通に括られており、一方民主党の小沢党首は「国連重視」とされていた。
 これに触発されて、「日米同盟重視」という言葉の意味を少々考えたい。

 以前のブログ記事で「ローマ人の物語はすべての人が読むべきだ」と書いた。私自身は塩野七生の『ローマ人の物語』が大変気に入っているが、別に塩野に限るわけではなく、ただローマ史の要所要所は物語として読んでおくべきだろうという趣旨で書いたものだ。
 ヨーロッパの人たち、とくに指導者層やインテリと呼ばれる人たちであれば「ローマ人の物語」に子どもの頃から親しんでいることだろう。またヨーロッパに文化的起源を置くアメリカも同様だろう。日本人の多くが『史記』や『三国志』のエッセンスあるいはエピソードのいくつかは知っているのと同じように『ローマ人の物語』を読んでいるだろうと思う。

 私の少年時代、「左翼」と呼ばれる人たちが「打倒米帝」と叫んでいた。しかし今考えると、彼らは「帝国(主義)」という言葉の意味を知っていたのだろうか? ローマ人が考案したインペリウム(帝国)という安全保障システムの意味を考察した上で「米帝」を打倒しようとしたのだろうか?
 どうも違ったのではないかという気がしている。当時の左翼たちがローマ史に親しんでいたという話はこれまで聞いたことがない。また、日本語で「帝国」と書いてしまうと「大日本帝国」のイメージが強すぎるため、インペリウム(ロマーヌム)の意味がかき消されてしまうようにも思う。

 1961年生まれの私がこれまで生きてきた時代、日本の安全保障はパクスアメリカーナの中にあった。つまり日本はアメリカ帝国(インペリウムアメリカーヌム)という安全保障システムに依存していたと理解している。
 そしてアメリカの権力者たちは、ローマ帝国興亡史くらいは充分に勉強していることだろう。それどころか、塩野七生『ローマ人の物語』を読めば読むほどに、アメリカの安全保障政策はローマ史を教科書の一つにしているという仮説が考えられ、確信へと変わってゆく。アメリカはおそらく意図的にインペリウムを構築してきたのだと思う。

 強力なインペリウムが存在する時代の中規模国として、戦後日本が安全保障をアメリカに依存したという選択は充分合理的だ。そして長年その状態を続けてきたのだから、「インペリウムアメリカーヌムからの脱却」「近い将来の日米同盟破棄」といった主張を明確にしている人を除けば、政治家の大部分はなにがしか「日米同盟重視派」の枠内に納まると考えていいのではないだろうか。
 だとしたら、政策・主張を「日米同盟重視派」と「国連重視派」に分けて議論する意味はどこにあるのだろう。

 現在の世界情勢を「多極化」という枠組みで理解しようとする動きがある(私がネット上で見聞きする中では田中宇氏が有名http://tanakanews.com/)。あるいは北沢洋子氏が、以前国会に参考人として呼ばれ、多極化について説明していた(2007年2月28日、参議院国際問題に関する調査会http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0023/16602280023002a.html)。
 上記問題意識に立脚して言えば、「多極化」は「アメリカ帝国の終焉」を意味する。つまり、もし世界が多極化しているのだとしたら、インペリウムアメリカーヌムに代わる新しい安全保障システムを構築しなければならないということになる。

 ことさらに「日米同盟破棄」を主張する人以外は、多かれ少なかれ「日米同盟重視派」だろうと先に書いた。だとすれば、わざわざ「日米同盟重視派」に分類される政治家は、日本の安全保障についてインペリウムアメリカーナ以外のアイディアを持っていない可能性がある。
 「国連重視」以外の選択肢(力点の置き方)もあると思うし、小沢一朗が最適解とも思わないが、少なくとも「日米同盟重視派」というだけでは新しい安全保障システムは構築できないだろうと考えている。

|

« 自然エネルギー発電の基準価格[2008/08] | トップページ | 千羽パネルプロジェクト、スタート! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/35133/42441309

この記事へのトラックバック一覧です: アメリカ帝国の終焉に覚悟のある首相候補は?:

« 自然エネルギー発電の基準価格[2008/08] | トップページ | 千羽パネルプロジェクト、スタート! »