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グリーンピース職員の逮捕に対する意見

 6月20日にグリーンピース職員2人が逮捕されました。鯨肉の「横領」を証明するために運送会社から輸送中の荷物(鯨肉)を窃盗したという理由です。
 言論の自由に対する侵害だと判断し、私の意見を書きます。

 初め、逮捕は仕方ないかなと思って法律の専門家に聞いたところ、逃亡のおそれがないのだから不当逮捕と言うべきだろう、という意見でした(この部分、自分の意見でなくて恐縮ですが、法運用に関する内容なので、専門家の意見を求めたものです)。
 自ら記者会見を開いて告発することを目的とした行動であり、すでに記者の前に顔を出していることからも、逃亡の恐れがないのは明らかであり、逮捕は不当だと考えます。

 また、報道ではグリーンピースの事務所に家宅捜索が入ったと聞きましたが、これも不当だと考えます。
 形式的に言えば捜査上の必要があったとも言えるでしょうが、目的や手段を考え、また荷主に与えた損害が不法行為によると認定された場合でも賠償金で(場合によっては慰謝料を加えて)回復できる程度のものであったことを考えると、今回のような場合に家宅捜索まで行なうのは不当に過剰な捜査であり、かつ威嚇的であると考えます。

 現在の市民社会において、非暴力直接行動はアピールの手段として広く認めらる方向にあるし、そうであるべきだと考え、また言論の自由は言論の継続がなければ確保できないと考えるので、今回のケースについて意見を述べたものです。

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コメント

初めまして記事読ませていただきました。どのような法律専門の方に聞かれたのかよくわかりませねんが、同じく法律実務家としてコメントさせていただきます。結論から言えば、容疑者の逮捕、ならびに、容疑者の自宅およびグリーンピースジャパンの事務所の家宅捜査は正当であろうと思います。要は、

1)容疑者が犯罪の成立を否定していること
2)組織的犯罪の可能性も捨てられないここと

が理由です。この両者が揃っている場合、「逃亡」「証拠隠滅」の恐れを通常は裁判所は認定します。尚、1)と所謂「無罪推定」は別の位相の問題です。

また、最大級の法的制裁である刑事法の適用が正当化されるかどうかを決める犯罪の重大性は(社会的コストも高く人権侵害の蓋然性も大きい、刑法はできるだけ発動しないで社会的紛争を解決するべきだというアイデアを「謙抑性の原則」と申しますが)、犯罪の客体の大きさ(この場合、盗品の鯨入り段ボール箱1個の市場価格、や西濃運輸が受けた実害算定金額)だけではなく、犯行の計画性、社会に与えた衝撃(遵法感情の毀損)、再犯の可能性等々で判断されるものです。

ならば、本事例は極めて重大な犯罪であり得るのであり、上に挙げた2点をも加味すれば、逮捕と家宅捜査はやむを得ない。畢竟、漏れ聞く所では顧問弁護士の弁護士事務所の家宅捜査も検討されているとの観測もあるそうですが、それも当然であると私は考えます。

投稿: KABU | 2008.06.25 16:08

真摯で有意義なコメントありがとうございます。

いくつも論点があるのですが、基本的には逮捕と家宅捜査という手段の社会的正当性を論じたいと考えています。形式的にはおそらく違法捜査ではないと思いますが、本件のような場合に逮捕権や家宅捜査権を行使するのは社会的に不当ではないかということを議論しておきたいという趣旨です。

まず、容疑者が犯罪の成立を否認していることについてですが、事実関係を否定しているわけではありませんし、逮捕することでどれだけの情報を得られるのか、疑問です。
ただし証拠物件、とくに鯨肉の現物についてはその場でそれだけを押収する方法があればいいのですが、なかなか難しいでしょう。この点に関しては、「窃盗犯に関して最も重要な目的物を証拠として押収するために逮捕と家宅捜査が必要だった」という論理の正当性は、単に形式的に正当というだけでなく、当然という考えが多数だろうと予想しつつ、最後のところで論じたいと思います。

組織的犯罪の可能性については、まあグリーンピースの場合組織的行為に決まってると世俗的には思うわけですから、この部分についても家宅捜査したくなるのは普通の考え方だと思いますので、最後でまとめて。

次に、民事上の損害の回復可能性ですが、これについてはいただいたコメントを読むかぎり私と同意見と思われますので、議論を飛ばします。

したがって、いただいたコメント中、刑事犯罪(有罪だった場合の)としての重大性が一つの焦点になるわけですが、計画性・再犯の可能性は今回の場合あまり重要ではないと考えられるので(反論をいただければ説明しますが、とりあえず飛ばします)、この部分では「社会に与えた衝撃(遵法感情の毀損)」が最大の論点だと思います。

ここまでを踏まえて、私が今回の逮捕・家宅捜査を不当だと主張する論拠の要点に入ります。

まず、日本人が捜査に対して臆病すぎるという点を指摘します。市民運動にかかわっているとしばしば出てくる問題なのですが、日本人は違法性に関してナイーブすぎるところがあると思います。極端な言い方をすると、一時停止違反で逮捕されても「違法なんだから仕方ない」と考えがちな傾向がある。
違法性の境界線、可罰的違法性の境界線、逮捕や家宅捜査が許される罪の重大性、といった何段階もの境界線があり、またその境界線も時代と共に動くものであって、常に社会的議論が行なわれる。民主主義社会における刑事法の運用にはそういう側面がついてくるという認識が、日本社会では不充分だと私は考えています。
小学生には「人のものを取ってはいけない」という言い方で「遵法感情」を教えるので充分でしょうが、公民の授業では「社会的主張を行なう場合に許される違法性と許されない違法性の境界線」など近代市民社会の基本も教える必要があると考えます。
かつては、ストライキやデモ、集会ですら違法とされた状況がありましたし、今でも違法とされる国もあります。そのような歴史的状況に対しては、違法であることを知りつつ乗り越える行為も必要だった(法律を犯さずには乗り越えられなかった)と私は理解しています。

現代市民社会においては、非暴力直接行動がどこまで許されるかの境界線の模索が、そういう問題を提起していると私は考えます。
市民的言論活動における非暴力直接行動において、典型的に問題となるのは建造物侵入罪です。例えば、不特定の人が出入りする場所(社会的問題のある組織)において威力業務妨害ほどではない程度のデモンストレーション(ダイインや、巨大な人形を掲げるなど)を行なった場合、排除されることはあっても建造物侵入で逮捕されるべきではない。こういう基準は法律のプロが決めるというより、社会的に定めるべき基準でしょう。
また「非暴力」の境界線に関して、例えば、卵を投げつける行為は状況次第で許されたり許されなかったりするボーダーだと私は考えており、一方正体不明の液体が入ったビンを投げる行為は「非暴力」ではないと考えます。たとえば、です。
要は、政治的主張であり、人道上問題になる罪でなく、公然と積極的にアピールしているといったような条件(厳密に定義するのは難しいでしょうが)のときに、形式的法運用より言論の自由を優先すべきではないかという、社会的問いかけが本旨になります。

最後に、今回のグリーンピースの行為(すでに組織的行為と断定していますが、、)に対する私の考えを書きます。
建造物侵入ではなく今回のような窃盗は、私の知るかぎり初めてのケースです。そして金銭的に回復可能な程度の窃盗とはいえ、目的も小さいというのが私の判断です。捕鯨のあり方を正面から問いかけるような案件であれば「社会通念上緊急非難と認められる」くらい主張したいけれど、この件における「横領」は、グリーンピースの主張が通ってもトカゲの尻尾以上にはならないでしょう。

一人の市民運動家として「主張すべきは主張しておかなければ」と考えて書き始めましたが、やっぱり今回のグリーンピースのやり方は、ちょっとお粗末、とも言いたいですね。
とは言え、逮捕・家宅捜索が不当だという主張を取り下げるつもりもないので、論理的な異論・反論、歓迎します。
(あくまでも個人ブログですから、「非論理的」「無意味」と判断した場合には黙って削除する権利を有し、必要に応じて行使することを付言します)

 結論が書けているはずもないので、議論の継続に期待しつつ、筆を置きます。

投稿: dai(ブログ管理人です) | 2008.06.25 20:38

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