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シェル社長文書の意味するもの

 シェルの社長ファンデルフェール氏が「2015年以降石油の供給は需要を満たせなくなる」という予測を公表した。シェル社のホームページに「After 2015, easily accessible supplies of oil and gas probably will no longer keep up with demand.」と書かれている。
 ビッグニュース、ということで、私と友人たちの間で衝撃が走った。

 実はシェル社ホームーページとほぼ同じ内容の電子メールを、同社長が全社員あてに送っているようで、その内容がThe Oil Drum というブログに掲載されている。このブログ中では(社員あてメールの中では)「Shell estimates that after 2015 supplies of easy-to-access oil and gas will no longer keep up with demand.」と書いてあり、シェルが行なった調査の結果であることを明記している。
 また、この内容は「来週(2008-01-28の週)にいくつかの新聞に掲載する予定の原稿をベースにした」という記載もあるので、週明けには新聞等に外電として入ってくるかもしれない。
 この文章の意味するところを考えてみよう。

 オイルピークを議論する際、標準的なシナリオの一つとして参照されるものに、アメリカ政府(USGSが調査・公表し、それをもとにEIAが整理して公表)の調査結果があり、私も以前このブログで評論を加えた(ブログ記事はここをクリック)
 最初に、上記ブログ記事への訂正を加えさせていただく。
 ブログ記事では"Long-Term World Oil Supply Scenarios" というEIAの論文を読んで、第一印象として『印象を先に書くと「修士論文」、あるいは immature』という言い方で批判を加えた。ピークまでは年率2%の生産量増加、ピーク後はR/P=10で減少というモデルがあまりに単純すぎる、というのがその理由だ。
 しかしよく考えてみて、この印象は的外れだったと気付いた。この論文の目的は未来経済を予測することではなく、石油資源について理解するのに必要な情報を提供することにあるからだ。複雑な経済モデルを使ってしまうと、経済予測が主眼なのかと誤解されたり、趣旨と無関係な批判を受けることもあるだろう。非常にシンプルなモデルを使い、しかもシンプルなモデルであることを明記した上で推計結果を示しているのだから、誠実な態度と評価すべきだろう。
 ということで、私自身の第一印象を否定させていただきたい。

 さて、このシナリオとファンデルフェール氏の主張を比較してみよう。といっても、要点はすでに書いてしまった。EIAのシナリオは過去のトレンドを延長して年率2%の生産量増加を見込んでいるのに対して、ファンデルフェール氏は2015年以降、供給は需要を満たせない、と書いている。メジャーズの一員であるシェルの社長がこのようなことを書くということは、EIAシナリオに対する批判を含むと考えるべきだろう。今後EIAシナリオの信頼性に関する検討が行なわれることを期待したい。

 もう一点、年次として2015年が上げられていることにも注目したい。今から7年後だ。
 油田開発の実務に関する知識は皆無であるが、すでに発見された油田やその周辺であれば、新しい油井を掘削し生産開始するまで、普通に考えて7年はかからないだろうと思う。つまり、現在の原油高を背景にして今後大きな投資を各社・各国が行なったとしても「需要を満たせない」という意味に理解できる。つまり2015年以降の石油の供給側制約は、投資不足による制約(「スループット制約」という言葉を使う人もいる)ではなく、資源制約だということになる。

 今後しばらくの間、石油需給はプラトー状に(年率0%前後の増減率で)推移するのではないかというのが私のこれまでの予想であった。ファンデルフェール氏の文章は、私の予想に近い未来を描いているように思える。
 今後石油の供給が大きく伸びることはなく、価格は上昇基調で推移し、その基調のままいつの日かピークアウトを迎える、というのが中長期の石油需給予測として妥当だろうということになろうか。

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コメント

 んー、仏トタル社やノルウェー・スタットオイル社の社長も昨年ピークが近いとすでに語っていましたので、daiさんがそんなにびっくりするのはなんで?という気がするのですが。

投稿: SGW | 2008.01.27 22:18

いやあ、見落としていただけです。トタルのニュースは後で聞きました。スタットオイルの件は、言われてみればどっかで聞いたような気もするなぁ、くらい。石油は専門(自然エネルギー・省エネ)のちょっと外なので、情報に疎いです。(^^;)

投稿: dai | 2008.01.28 09:16

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